( 2014.06.10 西村幸祐氏






オバマ大統領の真意とは?
 つまり、オバマ大統領の意図とは関係なしに、日本政府は米韓首脳会談の内容を真面目に受けて、 「何が起きたのか正確で明瞭な説明」 をするために、慰安婦問題を 「正直に公平に認識」 するために、河野談話の元慰安婦の聞き取り調査の再検証を 「正直に公平に」 行い、結果的に日本政府が河野談話を撤廃する方法を持ち得たのである。
 現在の日米関係の新しいフェイズとは、 具体的にはいい悪いを別にして、 はっきり現象面に表れているのが日本の米国離れである。 それは、 スポーツを除く文化、 芸能、 サブカルチャーに関する日本人のここ10年の傾向になった米国離れだけでなく、 政治的な親和性がこの数年で急速に失われたことも含めてである
 現在の課題である河野談話問題にどう決着をつけるのかというポイントも、実はそこにある。 もちろん、靖國参拝への米国からの雑音もそれに含まれている。




 ペリー来航による日本の開国後、米国は幕末の日本の国力や日本人の民度に驚嘆し、露骨に侵略的な態度を見せることはなかった。 明治維新後も、米国はハワイ侵略や米西戦争という厄介な難題を抱えていた事情もあり、日露戦争終了後までは日本と協調路線を取った。 日米関係の転機は日露戦争後に訪れるが、大きく事態が変わるのは10年後の第一次世界大戦後だった。
 これはあまり知られていないが、ウッドロー・ウィルソン28代大統領は、悪名高い人種差別主義の秘密結社、KKK( クー・クラックス・クラン )の支持者だった。 〈 理想主義者 〉という評価がある一方で、ウィルソンは政権内にKKK支持者を積極的に囲い込んだ。
 たとえば、大統領選挙でウィルソンを支持した 「ニュース・アンド・オブザーバー」 紙を経営する実業家で、KKK団員だったジョセファス・ダニエルズを海軍長官に任命して、第一次世界大戦の米国海軍の指揮を執らせている。
 このダニエルズが、ウィルソンに日本を敵対視する太平洋覇権に目を向けさせたのは間違いない。 それは、渡辺惣樹氏が 『日米衝突の根源』 ( 草思社 )、 『日米衝突の萌芽』 ( 同上 )で詳述したとおり、米国の日本敵視政策が醸成される歴史に加えられる一つのエピソードなのである。
 第一次世界大戦後のパリ講和条約で、ウィルソン大統領は国際連盟の発足を提案しながら、常任理事国になる日本が提案した人種差別撤廃条約に真っ先に反対し、結局、米国は国際連盟に参加することはなかった。
 ジャーナリストで評論家のジョナ・ゴールドバーグはベストセラーになった 『LIBERAL FASCISM』 ( 「リベラル・ファシズム」 未訳・2007 )において、ウィルソンや原爆投下の 〈 戦犯 〉 であるトルーマン大統領とKKKの関係を米国の左翼主義の歴史のなかで批判的に描いている。
 その米国が第一次世界大戦直後から太平洋の覇権への意思を露骨にし、徐々に日本封じ込め政策を取り始め、世界恐慌のあと、1930年代から日本を戦争に追い込んでいったことは、今日ではもはや周知の事実と言える。
 大東亜戦争は、そんな米国の誤った世界認識と戦略の一環として表出したものである。 しかも、米国の日本占領中にシナと朝鮮半島北部の共産化をもたらした。 米国にとっても、日本と戦って得られたものより失ったもののほうが多かったのではないかという反省や見直しが、近年、米国のジャーナリズムや歴史関係の分野でも数多く行われるようになってきた。
 それらの背景も踏まえたうえで、現在の日米関係が極めて危険な状況に陥っていることを、日米両国は真摯に受け止めなればならない。




 そもそも、日本の敗戦後69年間の歴史で、これほどの米国離れがわが国の様々な分野で進むことはなかった。
 河野談話や靖國参拝にまつわる歴史認識問題が日米の齟齬の要因になっているのは、長いレンジで日米関係の歴史を俯瞰すれば一種の必然であり、論理的な帰結である。 つまり、この日米関係の新たな局面は、嘉永7年以降の160年の日米関係が、ここに来て総決算を迫られているということでもある。 歴史に対する新たな視座の獲得が、日米両国に要請されているということに他ならない。
 いささか旧聞に属するが、ロシアの日本語版ネットメディア 「ロシアの声」 が3月14日付で、 《 多くの米国人 オバマよりプーチンが強い指導者 》 という興味深い記事を掲載した。 英国のメディア 「YouGov」 が 「エコノミスト」 誌と共同で行った調査で3月8日から10日にかけて行われ、1000名の米国人がウクライナ問題に答えている。
《 78%の米国民がプーチンの政治的影響力を認め、そのうち33%は非常に強力であると考えているほか、45%は比較的強力であるとしている。 比較的弱いと答えたのは15%、非常に弱いと考えているのは8%に過ぎなかった。 逆に、オバマが強力であると考えているのは45%で、55%は弱い指導者であると考えている。 さらに、米世論は対ロシア制裁導入を支持していない 》
 さらに 「ロシアの声」 は、
《 全ロシア世論調査センターが発表した資料によれば、プーチン大統領の支持率は過去3年で最高の71.6%に上っている 》
 と続けている。
 はたして、この調査の信憑性と客観性がどこまであるか分からないが、この記事に接した多くの日本人が、ネット掲示板やSNSなどで調査結果に共感していたことが重要なのである。 かつての60年・70年安保の反対運動に身を投じた反米主義者たちは、地団駄を踏んでいるかもしれない。 だが実際は、当時の反米主義者が親ソ連、親共産主義だったことより 〈 反日 〉 であったことが、今日の滑稽な状況を招いている。
 その滑稽な状況とは、朝日新聞が3月16日に一面トップから三面にかけて報じた 《 集団的自衛権・行方を追う 「ナショナリズムとの連動懸念」 ハーバード大ナイ教授に聞く 》 という記事に見て取れる。 なぜなら、ここで朝日は米国と一緒になって安倍攻撃を行っているからである。
 つまり、戦後日本のいわゆる 〈 保守派 〉 が朝日的言論と対峙していたとき、彼らはいわゆる 〈 親米保守 〉 として米国側につく 〈 番犬 〉、あるいは 〈 ポチ 〉 として反日サヨクに位置づけられていたのだが、朝日が立場を真逆にして今度は米国サイドに立ち、いわゆる 〈 保守派 〉 の言論を封じ込めようとしている構図が表れてくる。
 皮肉なことにこれは朝日の変化というより、むしろ米国の変化に原因があった。 そして、その背景に冷戦後の世界の枠組みの変化と米国一極主義の破綻、すなわち米国の緩やかな衰弱があることを指摘しなければならない。
 重要なことは、そういった世界の大きなパラダイムシフトのなかで 〈 河野談話 〉 がどう位置付けられるかということなのである。 現在の米国がそんな視点を全く持ち得ないのならば、ますます日本での反米感情が高まり、かつてないほどの規模で時代と歴史を大きく動かすモメントとして日米関係に決定的な影響を及ぼすことになるであろう。




 昨年来、米国は矢継ぎ早に〈 歴史問題 〉に関するメッセージを安倍首相に手を替え、まさに人を替えてでも送り続けた。
 まず、昨年夏以来の靖國参拝を控えてほしいというメッセージがあった。 そして、日本は韓国に〈 歴史問題 〉で妥協しろというメッセージである。 ある時は国務省高官であり、ある時はバイデン副大統領であったり、またある時はケリー国務長官であったり、とにかく総動員で〈 歴史問題 〉をむしろオバマ政権が日本に焚きつけ、煽り続けてきた。
 ここで見落とせないのは、本来なら〈 歴史問題 〉にならない事象をあえて〈 問題化 〉する米国の態度である。
 それは、すでに2年前からの兆候だった。 韓国の李明博前大統領が2012年8月10日に竹島に不法上陸、その4日後に天皇陛下への土下座謝罪要求発言を行って日韓関係を決定的に冷却させたのだが、翌日の8月15日にアーミテージ元国務次官補がハーバード大のジョセフ・ナイ氏と共著で 「第三次アーミテージレポート」 を発表し、韓国との関係修復を日本に求めていたのである。
 このタイミングの悪さほど、現在の米国の拙劣な外交戦略を物語っているものはない。 よりによって、左派の日本人までもが韓国の暴挙に憤慨していたときに、韓国の名が初めて記入された〈 アーミテージレポート 〉が出されたのである。




 ジョセフ・ナイ氏は前述した3月16日の朝日の紙面で、《 安倍政権は憲法解釈の見直しを考えていますが、日本国内には憲法改正で集団的自衛権を行使できるようにすべきだという意見もあります 》 という質問にこう答えた。
《憲法の改正は近隣国をさらに神経質にさせると思います。 中国や韓国では、日本が軍国主義的になるのではという不安が生まれています。 憲法改正はこの不安を増大させるでしょう。 日本政府のいくつかの行動は、近隣国が懸念をしているこうした状況を悪化させています。 たとえば、安倍首相の靖國神社参拝や首相周辺の人々の村山談話や河野談話見直しに関する発言です》
 なんと、ナイ氏は明確に、ここで日本の憲法改正を否定したのである。 さらに氏はこう続ける。
《米国内でも、日本で強いナショナリズムが台頭しているのではという懸念は出てきています。 個人的には日本の大部分の意見は穏当なもので、軍国主義的なものではないと思います。 日本の集団的自衛権行使は、ナショナリズムで包装さえしなければ、東アジアの安定に積極的な貢献を果たしうるものです。 日本は安倍政権の下で正しい政策を進めていると思います。 しかし、首相の靖國参拝や河野談話、村山談話見直しの兆候と合わさると、良い政策を悪い包装で包むことになります》
 これを二枚舌と言わずして何と言うのだろうか。 さらに、わが意を得たりと想像できる大島隆特派員の 《 むしろ 「包装」 の部分こそが安倍首相の心情であり本質だとしたら? 》 という質問に、ナイ氏はこう続けた。
《我々が同盟国の首相の考えを決めることはできません。 ただ同盟国として、 「それをやることはあなたにとって良くないし、我々にとっても良くないことだと助言します」 とは言えます。( 略 )
 私が、日本が攻撃的な国になっていると心配していないのは、それが日本全体の世論ではないからです。 同盟国の指導者のやったことに失望すれば、我々は率直に失望を表明すべきです。 しかし、これが日本の人々や日本という国との同盟関係を失うことを意味するわけではありません。 日本は 「どうやって近隣諸国の懸念を引き起こさずに、理にかなった政策変更を行うか」 と自問すべきです。 日本が平和を愛する国であり、軍国主義の国ではないことを示すための一歩を踏み出すべきです》
 世界の軍事費の約半分を捻出している軍国主義の大国、米国に心配してもらう必要はさらさらないが、この程度の認識しか持ち得ない人物が〈 知日派 〉と言われる状況こそが、実は日米関係の最も危うい局面を象徴している。




 そもそも、ナイ氏が示す 「日本が攻撃的な国になっていると心配しないのは、それが日本全体の世論ではないから」 という認識そのものが甘すぎるのではないだろうか。
 米国が日本の河野談話否定を認めたくないのは歴史認識や人権の問題ではなく、このように米国の旧態依然とした新しい時代に対応できない安全保障上の問題なのである。 しかもそれは極めてお粗末な安全保障上の問題で、単純に太平洋の権益を米国が日本と韓国をワンパックにして、シナやロシアに対峙させようという戦略しか描き得ていないからなのである。
 冒頭述べたように、米国は第二次世界大戦で危険な対米戦争へ日本を愚かにも誘引し、結果としてシナの権益を全て失うという国策上の大失態を犯している。 そのとき米国の目を惑わしたのは、まさにシナへの幻想であり、ナチスより性質が悪かったコミンテルンの囁きだった。
 もしかすると、米国は160年前にペリーを寄こして日本を恫喝したときから、実は全く変わることのない巨大な鯨のまま、またしても同じ誤謬を繰り返そうとしているのかもしれない。
 前述したように、河野談話の本質を一部の米国のトップは本当は分かっているはずである。 日本は強制性があったかどうかを問題にして河野談話を撤廃しようとしているのだが、韓国は日本に強制性はあったと言いながら、米国には戦時売春は性奴隷だと言い続けている。
 その韓国の二枚舌を米国は分かったうえで、日本と韓国が米国の都合のいいように〈 仲良し 〉になれば安心していられる。 オバマ大統領の4月25日の米韓首脳会談後の記者会見が、何よりもそれを物語っているのではないか。
 米国はここでも、韓国と同じように二枚舌を使い続けているのだ。 河野談話否定に反対なのは靖國参拝反対と同じで近隣諸国が騒ぐからだ、と国務省報道官のブロンド女史も言うだろうが、韓国にはそう言わず、さらに本音は隠したままにしている。
 その本音は、ナイ氏への 「朝日・大島隆」 名インタビューの成果で、図らずも引き出された 《 憲法の改正は近隣国をさらに神経質にさせると思います 》 という言葉であり、日本の憲法改正を阻止することなのである。 しかもそれにはおまけが付き、 《 日本が軍国主義的になるのではという不安が生まれています 》 ということである。
 もののわかった米国人なら、戦前の日本も軍国主義だとは思っていない。 つまり、日本が恐いから永久占領をしておこうという古臭い黴の生えた国家意思が、米国の言動になって表れているのである。


使

 キャロライン・ケネディ米国駐日大使が、3月8日に以下の文章をツイッターに書き込んだ。
《ベアテ・シロタ・ゴードン─日本国憲法に女性の権利を書き込みました》
 世界女性月間ということもあってこのようなメッセージを書いたのだろうが、あまりにも幼稚で不用意ではないだろうか? 日本国憲法を、護憲派は一応日本人が書いたということにしているわけで、ケネディ大使は改憲派を勇気づけてくれたのかと錯覚してしまう。
 つまり、それほど上から目線な米国の特質をケネディ大使のツイートが無邪気に表し、心ある日本人からまたしても反感を買っているのである。
 このツイートを私に報告してくれた主婦の方は、ツイッターにこう書いている。
《大使も( 彼女を )擁護している人も女性の権利を絶対視して自主憲法かどうかはどうでもいいようですね。 故上坂冬子さんは生前、ベアテ・シロタ・ゴードン氏が関与した条文を、 「伝統的親子関係をアッというまにかなぐりすて」 日本の家族関係を崩壊させた条文であると批判していました》
 ケネディ大使の書き込みは、チャールズ・L・ケーディスや、のちに自殺するハーバート・ノーマンのようなGHQ民生局を動かしていたOSS( のちのCIA )の共産主義者とほぼ同じ意識に立つと言っていいだろう。 真面目な話、日本の情報機関はロシア大使館より米国大使館を監視したほうがいいかもしれない。
 というのも現在、米国大使公邸にシナの工作員が自由に出入りしているような状況であるという情報もあるからだ。 ロシア大使公邸や英国大使公邸に出入りできない中国共産系メディアの人間が、米国大使公邸に出入りしているという。
 憲法の話に戻れば、国際法を蹂躙する占領憲法を1週間で作ったチャールズ・L・ケーディスはOSS職員で、ルーズベルト周辺のコミンテルンの一員だった。 驚くべきことに、何と昭和17年(1942)6月の時点で、OSSは日本解体の骨子 「日本計画」 を作成していて、それが日本占領後の憲法になったとも言える。
 とにかく、このケネディ大使の発言は、大使自らが米国の犯した 「占領者が被占領者に対して憲法のような根本法の改正に介入あるいは命令することは禁止されている」 というハーグ陸戦法規違反を告白しているわけである。
 ベアテ・シロタ・ゴードンについて、ヘンリー・S・ストークス氏はこう書いている。
《 スタッフのなかに、若いユダヤ・ドイツ系の女性がいた。 法律については、全く無知だった。 この一家は日本によってナチスの迫害から救われて、日本にやってきた。 両親は音楽家だった。 彼女はたった一人で、憲法草案の、女性の権利に関する条項を書くことを任された。 彼女、ベアテ・シロタは日本に対する大恩をそっちのけにして、日本の生活文化を破壊して、浅はかなものに置き換えたことを、晩年まで得意げに自慢した。( 略 )
 ベアテは占領軍に媚びて、日本の女性が男性から虐待されていると、偽った 》

( 『英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄』 祥伝社新書・P239 )




 2月19日にウォールストリート・ジャーナルが 《 TPPは日米関係にプラス、靖國参拝は何の得にもならず=米議員団 》 という記事を報じた。
《日本がワシントンで再びスポットライトを浴びている。 その注目の原因となっている話には、日米関係を強化する話もあれば、悪化させる話もある。 関心の高まりを示す1つの兆候は、米連邦議会の議員たちによる訪日の急増だ。 ジャパン・リアル・タイム( JRT )は19日、東京に到着した米下院の超党派議員団の4人を追い、彼らが日本政府・財界関係者と会談する合間に話を聞いた。
 ひとつ驚いたのは、日中韓の領土問題や歴史認識問題をメディアが大きく取り上げているにもかかわらず、議員たちが貿易、とりわけ環太平洋連携協定(TPP)交渉に大きな関心を寄せているらしいことだ。 しかし、彼ら議員は、安倍晋三首相による日本経済再生推進を称賛しながらも、同首相による12月の靖國神社参拝や物議を醸す一連の首相側近発言が米国で懸念されていると明言した。 安倍政権に対する信頼性への懸念をかき立てるとの見方だ》
 この記事では河野談話が靖國参拝の陰に隠れているが、当然、この議員団の懸念に含まれている。 しかし、ここで私は米国の自分勝手な歴史認識に憤れとか、昔の反日サヨクが行ったように米軍基地に突撃しろなどと言いたいのではない。 いやむしろ、河野談話見直しへの米国の異様な恐怖や靖國に関する一連の流れは、160年間の日米関係史のエポックメイキングな出来事であり、日本が初めて米国を客観的に見られる視点を持ち得るようになったということを強調したいのである。
 というのも、その後、米国の靖國参拝への批判が掻き消えてしまったことが重要である。 4月22日に始まった靖國神社の春の例大祭に安倍首相が参拝しなかったのは失態と言えるが、100名以上の国会議員団の参拝に欧米メディアは口を閉ざした。
 米国政府の対応も、安倍首相が昨年12月26日に靖國参拝をしたことへの〈 失望 〉の意味が、12月30日の国務省記者会見から変わり始めている。 これは、従来の左翼反米主義者でない一般の日本人の抗議が、米国大使館やケネディ大使のフェイスブックに殺到したことと関係があるはずである。
 4月25日の日米共同声明で、尖閣諸島の日米安保適用をオバマは明言し、さらにASEANN諸国の航海の自由、海洋の安全を守ることも謳い上げた。 その結果、シナが5月7日から南シナ海で横暴の限りを尽くしても、ベトナムもフィリピンも怯むことなくシナに対峙できている。 それを可能にしたのは、世界中を駆け巡って着々と布石を打ってきた安倍政権の外交成果に他ならない。
 米国は第二期オバマ政権が 「アジアン・ピボット」 ( アジア回帰 )というキャッチフレーズを謳い上げたものの、実際は財源不足や外交に無関心なオバマの意向で、むしろ 「アメリカ本土回帰」 と言えるような引きこもり体質を露わにしていた。
 オバマの外交上の失政を、この1年以上補って余りある安倍首相の〈 アジア新機軸外交 〉と呼べる外交戦略を米国が認めず、米国にとって都合のいい日本しか視野にないのなら、今後はますます日米の精神的な離反は大きくなるだろう。
 日米通商修好条約は、 嘉永年間にペリーの強圧的な砲艦外交によってもたらされ、 その約90年後にハルノートが出される前に米国によって一方的に破棄された。 そして敗戦後の日本は、 2000年の有史以来初めて、 米国という外国に6年半以上占領され、 米国が改造した政体・憲法の下でひたすら米国の保護国として経済的繁栄を築いてきた。
 その間の日米安保に対する左翼勢力の反抗が、 占領憲法を否定できない自己矛盾と無知の前に沈み込んだ歴史を私たちは知っている。




 ここでもう一度、大東亜戦争前も戦後も、米国は日本の近代化にとって〈 絶対 〉だったという事実を認識することが重要である。 日本がきちんと客観的に対等な日米関係を捉えることができたのは、皮肉なことに日米通商修好条約が著しい不平等条約だった日清戦争直後までだった。
 現在、日米関係の大きなパラダイムシフトが起きていることを私たちが知り得るのは、安倍首相の靖國参拝への米国の利己主義に基づく無分別な反応があったからである。 さ
 その流れのなかで、TPPなど決裂して欲しいと多くの日本人が思い出したことにも目を向けられない米国の勘の悪さ、視野の狭さ、つまり国家としての衰弱が明確な輪郭を持ち始めている。
 しかしこの流れは、米国にとってもむしろ歓迎すべき潮流になるのかもしれない。 なぜなら、日本人の米国からの意識の離反を客観的に捉えることができる米国人が増えれば、あるいは米国がパトリック・ブキャナンが 『超大国の自殺』 ( 幻冬舎 )でニヒリスティックに嘆くほどまだ荒廃していない健全な国家であるのなら、米国も初めて日本を客体化し、対等な関係を築かなければいけないと気がつくかもしれないからである。
 5月16日、全米でハリウッド製作の3D特撮映画 「ゴジラ」 が公開され、驚異的な興行収入を上げている。 もちろん、 「ゴジラ」 は昭和29年( 1954 )に、のちに東宝の社長となる名プロデューサー、田中友幸と本多猪四郎監督、円谷英二特技監督のコンビが生み出したキャラクターである。
 この3人は 「太平洋の鷲」 「さらばラバウル」 という戦争映画を 「ゴジラ」 の前に作っていることからも、ゴジラの太平洋からの日本列島上陸は、ビキニ環礁で日本人漁師に被害をもたらした米国の水爆実験と9年前の米軍の日本本土上陸の暗喩であることは間違いない。
 ということは、米国で 「ゴジラ」 が暴れ回ることが、ハリウッドの制作意図とは関係なしに、日本の独立や核武装のメタファーにもなり得るのである。 時代精神は往々にして、クリエイターの制作意図を超えて表されるからである。





( 2015.01.13 )

  


 戦後70周年を迎える平成27年は、歴史認識をめぐる 「歴史戦」 の年になる。 米紙ニューヨーク・タイムズなどは早速、日本の保守勢力に 「歴史修正主義」 のレッテルを貼ってきたが、戦勝国の立場にあぐらをかき、歴史を修正してきたのはどちらか ──。

 そんなことをぼんやり思いながら昨年末の休暇中、高校書道部を舞台にした漫画 「とめはねっ!」 ( 河合克敏著 )を読んでいて、思わず息をのんだ。

 作中、見開きで大きく紹介されていた昭和20年3月10日の東京大空襲を題材にした元教師の書家、井上有一氏の書 「ああ横川国民学校」 ( 群馬県立近代美術館所蔵 )があまりに衝撃的だったからだ。
「アメリカB29夜間東京空襲 闇黒東都忽化火海 江東一帯焦熱地獄」
「親は愛児をかばい子は親にすがる」
「全員一千折り重なり 教室校庭に焼き殺さる」
「噫呼何の故あってか無辜むこ殺戮さつりくするのか」
「倉庫内にて聞きし親子断末魔の声 終生忘るなし」
 書幅いっぱいに埋め尽くすように書かれた文字は、積み重なり、苦しみながら焼き殺された人々に見える。 自身は一命を取り留めたものの教え子を失った井上氏が、血涙で書いたかのような印象を受けた。

 約10万人が死亡した東京大空襲は、非戦闘員の殺傷を目的としており、もとより国際法違反である。 米田建三・元内閣府副大臣の調査によると、東京大空襲の 「作戦任務」 ( 同年3月9日付 )の目標は、軍事施設ではなく 「東京市街地」 と明記されている。 最初から一般住民を標的にしていたことは明らかなのだ。

 また、東京大空襲・戦災資料センターが東京都から寄贈された被害者の名簿3万人分のうち、年齢が分かる人について調べた結果がこの空襲の性質を表している。

 それによると、被害者の年齢層で最も多いのは0~9歳の20%で、次いで10~19歳の18%だった。 実に4割近くが未成年だったのである。 これは通常の戦争遂行行為ではなく、米軍による子供の大量虐殺( ジェノサイド )にほかならない。

 しかも米国は戦後、こうした自らの罪を日本人の目から隠そうとした。 明星大戦後教育史研究センターの勝岡寛次氏の著書 「抹殺された大東亜戦争 米軍占領下の検閲がゆがめたもの」 ( 明成社 )によると、連合国軍総司令部( GHQ )は検閲で、例えば米軍の東京大空襲での国際法違反行為を指摘したこんな文章を削除した。
 「無辜の一般市民に対して行へる無差別的爆撃、都市村邑そんゆうの病院、学校、その他文化的保護建物の無斟酌しんしゃくの破壊、病院船に対する砲爆撃等、かぞへ来らば例を挙ぐるの煩に堪へぬほど多々あつた」 ( 信夫淳平氏 「我国にける国際法の前途」 )

 「米国は原子爆弾と中小都市焼爆で日本全土を荒廃し数百万人の非戦闘員を殺傷せしめた」 ( 石原莞爾氏・宋徳和氏対談 「満州事変の真相」 )
 米国は、自分に都合の悪い歴史は堂々と修正し、歴史から抹殺しようとしてきたのである。 当時、日本に対する空襲について 「史上最も冷酷、野蛮な非戦闘員殺戮の一つ」 ( ボナー・フェラーズ准将 )と自覚していたのは間違いない。

 焼夷しょうい弾を使用した夜間無差別爆撃に踏み切ったカーチス・ルメイ少将の下で、作戦計画作成に当たったロバート・マクナマラ元国防長官は記録映画 「フォッグ・オブ・ウォー」 ( 2003年公開 )の中でこう赤裸々に証言している。
「ルメイも私も戦争犯罪を行ったのだ。 もし、負けていればだ」
 だが、戦勝国は全部を正当化し、敗戦国はすべてを我慢するなどという状態が70年以上ももつわけがない。 米国は傲慢になりすぎない方がいい。