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( 2011.03.20 )

  
 東日本大震災や東京電力福島第1原子力発電所の放射性物質( 放射能 )漏れ事故をめぐり、政府は相変わらずチグハグな対応を続けている。 「冷静」 を呼びかけながら不安をあおる菅直人首相。 与野党協調をうたいながら野党の怒りを増幅するばかり。 日を追うごとに政府の無策ばかりが浮き立っている。



  「最悪の事態になった時は東日本が潰れることも想定しなければならない」

 16日に首相が内閣特別顧問の笹森清元連合会長に不用意に漏らしたこの一言が国民に動揺を広げた

 枝野幸男官房長官は19日夕の記者会見で矢面に立たされた。 初めは 「事態の悪化を防ぐため全力を挙げることが重要という認識の発言だ」 と釈明していたが、 「国民は首相の言葉で緊張感を持った」 と記者に詰め寄られ、最後はこう認めざるを得なかった。

  「首相がそう言ったことについて必要以上に心配をおかけした側面はある…」

 首相は15日にも東電本店を訪れ 「( 現場から )撤退すれば東電は百パーセント潰れる」 と東電幹部を恫喝どうかつしている。 これほど安易に危機感をあおる首相も珍しい

 首都圏では、米やカップラーメンなどの生活物資の欠乏が続く。 蓮舫節電啓発担当相は 「不要不急の買い占めは控え、冷静な消費行動をとってほしい」 と呼びかけたが、原発事故を受け不要不急の外出を控えるよう呼びかけているのも政府だ。 「蓄えもなく屋内退避しろと言うのか」。 こんな不満に明快な回答はない。

 厚生労働省も17日に放射能汚染の暫定規制値を超える飲料水や生鮮品を出荷させないよう都道府県に通知したが、19日にホウレンソウなどで規制値を超える放射性物質が検出されると風評被害を恐れて一気にトーンダウン。 枝野氏は 「将来にわたり影響が出る恐れがないと国際的に位置づけられている数字を大きく下回っている。 ご心配なく」 と強調したが、これで不安が解消されるはずはない。




  「国難だからということで後にやればいいことを先にやろうとしたんでしょ? 本当にKY( 空気が読めない )だな ……」

 首相周辺は、首相が谷垣禎一自民党総裁に副総理兼震災復興担当相への就任を打診したことへの不快感を隠さなかった。

 この一件で 首相の頭には 「衆参ねじれを解消し政権を維持したい」 という考えしかないことを露呈した。 ある自民党重鎮は 「災害復興という最大の課題を谷垣氏に委ねて首相は何をする気なのか」 と冷笑する。

 しかも肝心の震災対応は後手に回る。 その証拠に政府の中央防災会議は一度も開かれていない。

 中央防災会議は首相と全閣僚、日銀総裁、日本赤十字社社長、有識者らで構成される正式機関。 自民幹部は 「首相はそういう会議があることを知らないのではないか」 といぶかしがる。

 にもかかわらず 「官邸主導」 をアピールしようと矢継ぎ早に本部を設置した。 被災者生活支援特別本部、原子力災害対策本部、電力需要緊急対策本部-。 これら本部からバラバラに指令が飛びかっており、ある経済官僚は 「指揮命令系統が混乱を極め、わけがわからない」 と悲鳴を上げる。

 しかも枝野氏に情報を一元化するあまり情報発信は滞っている。 福島県では自前で計測した水道水モニタリングデータの発表が遅れ、民主党出身の佐藤雄平知事は政府の災害対策本部で 「しっかりやってくれ」 と怒りを爆発させた。




 政府・与野党は20日も国会内で震災対策合同会議の第2回実務者会合を開いた。 「野党の力を借りたい」 と首相が呼びかけたにもかかわらず、野党側の提言を 「聞き置く」 だけ。 野党の不信を助長している。

  「風評被害の元凶は政府にある!」

 公明党の高木美智代政調副会長は事故後の政府対応を批判したが、政府・民主党から回答はなし。 放射性物質のモニタリング結果で原発から半径30キロ圏外でも高い数値が出ても詳しい説明はなかった。

 前日の要望・提案には 「今後とも全力で取り組む」 などと無機質な回答をペーパーで配るだけ。 岡田克也幹事長は 「明日回答します」 を決まり文句のように繰り返した。

 しかも会合はきっかり1時間。 自民党幹部は 「これではせっかくのアイデアも実現されない」 、公明党幹部も 「この会合がどれほどの効果を生んでいるのか」 と憤りを隠さない。





( 2011.03.25 )



 
 菅直人首相は25日、官邸に平成7年の阪神大震災当時、内閣官房副長官( 事務 )だった石原信雄氏を招いた。 「阪神大震災での政府の復興支援態勢を聞きたい」 というのが理由だが、東日本大震災発生から2週間も経過しての相談に、石原氏は 「原発問題もあって大変だが、緊急救援対策も念頭に置いた対応を考えたらいいのではないか」 と苦言を呈した。

 また、政府・与党内で検討されている 「復興庁」設置構想に関連、石原氏は阪神大震災では設置しなかった理由について 「復興庁が何でもできるわけではない。 窓口が一つ増え、二度手間になる。 対策本部が決めた方針に基づき各省の現場が働く態勢の方がいい」 と指摘した。







 



大震災の影響により海外で増す「日本リスク」
一方で「世界経済の勝者は日本」 という声も

 今回の大震災の悪影響は、依然わが国を覆っている。 原発事故は、状況が明らかになるにつれ、次第に深刻さを増している。 一時期、わが国経済を潤していたアジア諸国を中心とした外国人観光客の足は、このところばったり止まっている。

 東北地方に展開している生産拠点は、設備や建屋の復旧に加えて、電力供給の制限などのハンディキャップを背負うことになる。 3月決算ができない企業もあると聞く。

 一方、明るいニュースもある。 生産活動の低下によって、わが国の世界における地位が決して低くないことが明らかになったことだ。 それは、わが国企業が生産する自動車部品やIT関連の部材がないと、欧米の一部企業の工場が操業を停止せざるを得なかった ことからもわかる。 ある海外メディアには、 「世界経済のグローバル化の勝者は日本だったかもしれない」 という記事まである。

 すでにわが国は、少しずつではあるが復興に向けて動き出している。 企業はできることから手をつけ出しており、人々にも少しだが落ち着きが見え始めている。 国の心を1つにしようという動きも目立っている。 何とも頼もしい限りだ。

 一方、政治の機能には失望することが多い。 復興のための財源についても、予算の中での必要性の優先順位が不明確だ。 何をしようとしているのか、よくわからない。 政治に多くを期待することはできない。

 ロンドンにいる友人は、 「日本の最大のリスク要因は政治だ」 と指摘していた。 政治には、せめてわが国の復興を邪魔しないで欲しい。 そうでないと、企業も国民も、日本を見限ってしまうことが懸念されるからだ。

 今回の大震災によって、我々はわが国が抱える“日本リスク”を身に染みて感じることになった。 中でも重要なファクターの1つは、地震や津波などの天災が多発する国でありながら、それに対する備えが十分ではなかったことだ。

 原子力発電所の事故を見ても、費用負担を考えるあまり、リスク管理体制が甘かったことは否めない。 しかも、リスクが顕在化した後の東京電力の対応には、多くの専門家から非難の声が上がっている。 リスクが顕在化した後の事態のマネジメント手法も、かなりお粗末としか言いようがないだろう。

 それに伴い、企業は生産設備や建屋などの損壊に加え、精緻に組み立てられたサプライ・チェーンの中で隘路=ボトル・ネックの発生に苦しめられている。 さらに、コストの安い原子力発電に対する依存度が高いこともあり、これから夏場にかけて、電力供給に制約が出る可能性が高い。

 電力の制約は、産業界にとってかなり大きなハンディキャップになる。 生産能力が完全に復興するまでには、最低6ヵ月程度の時間を要することだろう。


部品発注を日本から分散する外資系企業
過熱していた外国人観光客も減少へ

 そうした“日本リスク”を意識して、海外企業の中には、部品の発注先を分散する動きも出ている。 特に、ITや自動車関連の部品などは日本企業のシェアが高いこともあり、大手メーカーのリスク分散の対応が目立っているようだ。 日本企業と代替が可能な分野では、中国や韓国など新興国企業がそれを好機ととらえる動きもある。
 
 それ以上に顕著なのが、外国人観光客の減少 だろう。 原子力発電所の事故を懸念して、銀座の有名デパートやホテルでは、外国人観光客の姿があまり見られなくなった。 今まで、わが国経済に寄与してきた、彼らの購買力を失うことは寂しい限りだ。 有名ホテルの1つは、 「泊り客の約7割が海外観光客だったことを考えると、頭が痛い」 とこぼしていた。

 ただし、原発事故は永久に続くわけではない。 大震災の悪影響も、今後少しずつ消えていくはずだ。 問題は、将来を見据えた復興が必要なことだ。 今まであったものを復活させるだけでは、わが国は従来の枠組みの中に留まることになる。 そうではなくて、将来を考えた新しい仕組みを基にした復興が必要なのだ。


世界経済の変化に追いつけないとジリ貧に
変化に対応できる新たな体制をつくるべき

 人口減少・少子高齢化など国内の経済環境の変化に加えて、世界経済の構図も大きく変化している。 わが国の社会がその変化に追い付けないと、将来の経済はジリ貧に陥ることは避けられない。 将来の経済を活性化するために、変化に対応できる新しい体制を作ることが必須なのだ。

 具体的には、東北を経済特区に指定して、企業の税負担を軽減することで産業を振興したり、設備投資について時限立法で優遇税制を設けて、企業の近代化を促進するなど様々な案が出ている。

 そうして企業の競争力強化を図ることが出来れば、東北の地域振興に役立つだけではなく、わが国産業全体の強化にも資するはずだ。

 忘れてはならないのは、電力供給に関する問題の解決だ。 中長期的には、原子力に変わるエネルギー構造を作るために政策が必要だが、その前に、今年の夏場をどう乗り切るかを早急に考えなければならない。

 1つの案としては、夏時間を導入することで、人々の活動時間を早めて、電力消費量を抑えることも選択肢の1つだ。 また、計画停電が良いか、あるいは家計・企業を含めた節電運動を展開するなど方法はある。

 それらの選択肢について、国民的な議論としてコンセンサスを早期に作るべきだ。 今なら、国民の理解を得ることは難しくない。 すぐに手を付けなければならない。 タイミングを逸すると、政府に対する懐疑的な見方が広がり、政策の実施の難易度は上がる。 それは、避けなければならない。


最大の“日本リスク”は政治の機能不全

 こうして考えると、おそらく民間企業の復興はそれほど難しくないと見る。 何故ならば、わが国企業には世界有数の技術力があり、国民の復興への意識が高まっているからだ。

 ところが、こと政治に関しては、驚くほど機能が低い。 多くの人が、日本の政府には大きな期待を抱いていないというのが本音だろう。 海外から見ると、それは一段と鮮明なようだ。

 多くの海外メディアは、日本の行政当局の能力についての評価が低い。 米国のオバマ政権は、日本政府の原発問題に関する発表を信用していないとの指摘がある。 我々日本国民でさえ、大本営発表にしか聞こえないのだから、むしろ当然と言えるかもしれない。

 問題はそれだけではない。 復興には多額の資金が必要になる。 内閣府の試算によると、今回の災害によるインフラ部分の損失だけで、16兆円から25兆円に上るという。 復興費用には、20兆円近い資金が必要になるだろう。 その資金をいかにひねり出すか。 それが、日本の将来にとって重要なポイントになる。


予算の中での優先順位を明確に
財政難への意識の薄さは国の信用力の低下

 特に重要な点は3つある。 1つは、予算の中での優先順位を明確にすることだ。 復興は今すぐ必要で、これは何をさておいても優先するべきだ。

 逆に言えば、子ども手当や高校の授業料免除などは、それよりも順位は下のはずだ。 現在の民主党政権は、人気取り政策を変えて、そうした優先順位をつけることができるかは疑問だろう。

 2つ目は財源の確保だ。 1つ目とも関連するのだが、優先順位の低い支出項目を極力削って、財源を見つけなければならない。 最終的には、国債の発行は避けられないだろう。

 それを、野放図に行なってはならない。 日銀引き受けなど論外だ。 財政規律に対する意識を明確にできないと、国の信用力を毀損することにもなりかねないからだ。 それは、何としてでも避けなければならない。

 そして 3つ目は、復興策の内容だ。 従来のように、安易な公共工事だけに依存していては、1990年代前半と同じ轍を踏むことになる。 これらの要素を考えて、復興のプランを作ることが求められる。

 


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