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( 2011.03.18 )

  

  

 地震は予想していたが、巨大津波までは 「想定外」 だった。
 マグニチュード9.0の同地震が引き起こした大津波に直撃された東京電力福島第一原子力発電所の1号機( 46万kw )、2号機( 78.4万kw )、3号機( 同 )、4号機( 同 )の被災状況は東京電力側の 「想定外だった」 という言い分( 本音 )に対して厳しい批判が集中している。

 『朝日新聞』 ( 同16日付朝刊 )が掲載した識者のコメントに、 「原子力関係者として、『想定外だった』 ということは決して言い訳にはならない」 ( 大阪大学名誉教授=原子炉工学の宮崎慶次氏 )、 『想定外』 という言葉が、その想定が適切だったのかの判断も反省もなく使われている」 ( 東京大学名誉教授 = 金属材料学の井野博満氏 )とあった。

 だが、ここで東電が甚大な災禍に直面して、本当に 「想定外」 と言ってはいけないことなのか。 今回の巨大地震と大津波は、その規模について、何と1100余年前の869年( 貞観11年 )、清和天皇時代に起きた三陸沖・貞観大地震に匹敵するものだという。 『続日本後紀』 にも 「陸奥国地震・津波」 の表記がある。

 東京大学地震研究所の佐竹健治教授によると、貞観大地震の津波の堆積物調査から、当時の海岸線から仙台平野まで数キロ、石巻で3キロ以上の津波が押し寄せたことが判明しているという。 さらにその津波の高さも10メートルをはるかに超えた大津波だったというのだ。 しかも、この津波の痕跡が発見されたのは僅か10年余前のことだったいうのだ。

 では、時代はずっと下って20世紀以降に限ってみると、発生した世界の地震で最大のものはマグニチュード9.5を記録した1960年の南米のチリ沖地震だ。 この地震に伴う津波ははるか太平洋を越え、5~6メートルの高さでやはり岩手県大船渡市を中心とする三陸海岸に押し寄せ、多大な被害をもたらした。

 04年のインドネシア・スマトラ沖地震でも、タイ・プーケット島などインド洋沿岸のリゾート地を大津波が襲い、周辺各国の地域住民や海外からのや観光客を呑み、島がまるごと水没するなどで約16万人が死亡している。

 今回の三陸海岸を中心とする東日本大地震の規模は、スマトラ沖地震に匹敵する。 看過できないのは津波による被害である。 それはまさに、東電福島第一原発を直撃した 「想定外」 の被害である。 同原発1号機の運転開始は711年3月、2号機74年7月、3号機76年3月、4号機78年10月。

 

 内閣府所管の原子力安全委員会は10年ほど前非公式に、 仮にこの 「重大事故」 を超える事故が発生した時にどう対処すべきかのマニュアルを作成したという( 未公表 )。 そこには、 「( 被災・破損した原子炉格納容器・圧力容器に )ひたすら放水する。 そして冷却する」 と記されているという。 ところが、 万が一のためのディーゼル発電機系統までが水没したほどの15メートル超の高い津波が襲来したのだ。




 今回は、1号機から3号機の各原子炉が地震を感知して、いずれも自動停止し、未臨界となった。 原子炉はフルパワーからの停止だったため膨大な残留熱を発生、これを冷却する必要があった。 通常は安全装置が働き、原子炉を冷却することになるのだが、そのための冷却水を送るためのポンプ類を駆動する外部電源が完全に喪失したうえ頼みの非常用ディーゼル発電機まで動かなくなってしまったのだ。

 このように原子炉、格納容器を冷却することができなくなり、ひたすら水をかけて冷却することに傾注したのである。 約40年前に原発を設計・建設するに当たって、1100余年前の貞観地震時の10メートル超津波再来を想定しておくべきだったというのであろうか。 「想定外」 はあり得るのだ。

 それよりも ここで指摘すべきは、首相官邸の危機管理体制である。 そして何よりも菅直人首相が 「マイクロマネージメント」 タイプの国家指導者であることだ。 震災翌日の早朝、自衛隊ヘリを駆って上空から福島原発を視察、そして15日早朝には東電本社に自ら乗り込んだ。

 要は、自分の目で確認し、耳で直接聞かないと納得しないのだ。 国家指導者が歴史的( 長期的 )見通しに欠けると国家100年の大計を誤る。 一人の人物が二つの能力を併せ持つのは難しい。 そこで昔から棲み分けが行われる。 さらに、良き指導者には良き参謀がいて先行きを冷徹に見通す ……。 さて、不眠不休で孤軍奮闘する枝野幸男官房長官の評価は概ね高いのだが、我が首相は如何なものか。





( 2011.03.20 )


 深刻な原発事故の拡大を防ぐべく、 「総力戦」 が日夜続いている。 聞こえてくるのは 「作戦は成功」 という大本営発表ばかりで、 冷静な評価や高度な専門知識に支えられた今後の見通しが示されることはない。 その役割を果たすべき組織、 原子力安全委員会( 班目春樹委員長 )は、 この間ずっと 「行方不明」 なのだ。
 安全委員会は日本の原子力安全を統べる元締めである。 行政組織上は内閣府の審議会のひとつで、経済産業省の原子力安全・保安院や文部科学省など役所の行なう安全規制を再チェックし、事業者と行政を両方監視する。 必要なら政府や自治体に勧告を行なう権限を持つ。
 その元締めが、東電福島の深刻な事故が判明してから10日経っても、一度も記者会見をしていない。 班目委員長が12日に菅直人首相と同道して現地訪問したこと、職員を現地対策センターに派遣したことなどは、ホームページに記されているが、国民に向けての情報発信はゼロである。
 何ゆえの沈黙なのか。 2000年に作られた原子力災害対策特別措置法=原災法では、安全委は対策本部長( 首相 )に技術的な助言を行なう、と決めている。 法制度上は、安全委という客観的な専門家の評価と意見を、政府は受け止めなければならない。
 班目委員長は官邸で連日開催されている対策本部の会議にはほとんど出席しているようだが、首相への助言はきちんとなされているのだろうか。 法律上は事故後すぐに立ち上げるはずの緊急技術助言組織はいつ作られ、どう機能しているのだろうか。 国民の目には何も見えていない。
 情報を対策本部に一元化するという意味で、安全委からの独自の発信を止めているというのなら、その旨をメディアや国民に広く示すべきだろう。 事業者の都合や政治の思惑に左右されない、専門家集団による中立的な評価や助言が、本当に首相に届いているのか、それは対策に速やかに反映されているのか、私たちは知るすべがない。




 安全委の沈黙は奇妙なねじれを生んでいる。 福島第一原発の半径20キロ以内の避難指示の自治体を対象に、放射性ヨウ素による甲状腺などの体内被曝を防ぐために、40以下の住民は安定ヨウ素剤を摂取するよう、安全委は16日に示唆したらしい。 それはIAEA( 国際原子力機関 )からの情報として、19日に日本に逆輸入されてわかった。 震災の危機にあって、日本の安全委の動向を国際機関から教えてもらうとは ……。 安全委事務局総務課は、これは勧告ではないとしているが、安全委が自ら語らないことは、福島原発事故にかかわる日本の国際評価を著しく低下させている。
 IAEAの天野之弥事務局長は18日に急きょ来日して首相をはじめ関係者と会談した。 同行して来たのは放射線測定チームである。 日本には多数の放射線モニタリングポストが設置され、その計測データの高速解析システムも備えている。 そこにわざわざ測定チームを引き連れてきたわけを天野事務局長は明言しなかったが、国際社会が日本政府の発表に少なからぬ不信を抱いていることは明らかだ。
 独立した専門家集団によるデータの客観的評価と科学的解析結果を発信しないと、国際的な信頼は得られない。 国内でも、危機の実態を国民の側から評価し、コメントする組織がないと、避難住民の不安は緩和されない。
 まさかとは思うが、政治家と事業者が手を組んで、小うるさい専門家の干渉を排除し、危機管理のパフォーマンスに走っていないだろうか。 関係者の間にそう心配する声があることも事実だ。




 正直に言って安全委はこれまで、冷厳な専門家としての役割を十分に果たしてきたとは言い難い。 原発の耐震指針作りでは大甘な基準を示し、現実の安全性評価でも東電福島第一の手抜かりと危険性を、ある程度承知の上で許容の範囲としてきたふしがある。 それでも、事業者や政治の思惑で隠されてしまいそうなリスクを、国際基準や科学的評価を盾に、公開させ、是正させる役割がまだ残っている。
 安全委は、大事故が起きた時に、当事者の暴走を止める 「冷却材」 として働くべき存在である。 そこからの情報発信が一切ない状態は、まさに冷却材の喪失であり、事故対策の司令部、対策本部の 「健全性」 を疑わせるものだ。
 今はとにかく福島原発からの放射性物質のリーク( 漏出 )、放射線の放出を減らし、炉心と使用済み燃料のプールを冷却して、準安定状態にすることが急務だ。 放水、電源の回復、ポンプやモーターなどの修理と起動、どれをとっても現在の放射線レベルだと、作業者の被曝線量はかなり大きくなる。
 東京消防庁のハイパーレスキュー隊員の場合、30ミリシーベルト近くなっている。 現地の東電社員で100ミリシーベルトを超した例もあると聞く。 それが具体的にはどの程度の被曝かについては、様々な比喩で解説されているが、放射線による生体への影響は、これ以下なら全く影響しないという 「閾値いきち」 は、今のところ科学的には証明されていないことを、肝に銘じておく必要がある。
 一般人の許容線量や、牛乳、ホウレンソウなどの食品基準は、思いっきり低く、十分な余裕を持って設定しているもので、それを少々超えても 「ほとんど=全く」 心配ない。 ただし、作業者の基準はそうはいかない。 菅首相と北沢俊美防衛相は、福島原発への放水活動を前に、自衛官の緊急時許容被曝線量を、100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げたこれに安全委はどう関与したのだろうか
 原発周辺の放射線レベルと、放出されている核種( 放射性物質の種類 )についての精密な解析をして、緊急時ゆえに許容されるべき線量を科学的に評価するのが安全委の仕事だったはずだ。 政治家が手柄顔で言う話ではなく、科学的裏付けを示して、安全委が語るべき事柄ではなかったか




 現地の東電の社員や関連会社の社員の奮闘には大いに敬意を表する。 生命の危険を感じながらの職務遂行には、涙も出てくる。 しかし、この危機的な状況を招来した東京電力という企業体の事業者責任は、これと峻別すべきである。 原子力損害賠償法では、原発事故については一義的に事業者が無過失責任、無限責任を負うことになっている。 1200億円の保険も義務付けられており、事業者の手に負えない分は政府が補填する。
 原賠法には特例が定められており、 「異常に巨大な天災地変や社会的動乱」 による事故は免責される。 M9.0の地震は確かに異常な天災地変といえるが、それは地震そのものの規模を表すもので、東電福島第一原発に届いた地震動は、重力加速度が500ガル強でしかない。 中越沖地震で柏崎刈羽原発が受けた地震動の半分以下である。 地震波の周期、成分などが違うので強さの単純比較はできないが、異常に巨大な地震動では全くない。 津波も東電自身が織り込み済みとしてきた。
 それでも大津波という要因を盾に事業者が免責を求めるのは、当然予想されるところだ。 政府は東電の本社に海江田万里経産相を送り込み、外見は東電を指揮しているように見えるが、重い責任を背負うかもしれない企業体に政府が寄り添っているようにもみえる。 安全委は事故原因の調査権限も持っており、対策チームにおけるその位置づけを誤ると、いらざる疑念を呼ぶことになりかねない。




 原子力安全委員会の歴史は、日本の原子力事故の歴史でもある。
 1978年に国の原子力行政を担う原子力委員会から分離・独立したのは、原子力船 「むつ」 の放射線漏れ事故がきっかけだった。 2000年に原災法で安全委の権限が拡大したのは、前年の茨城県東海村でのJCOによるウランの臨界事故が原因だった。
 日本の原子力史上初めて犠牲者2人を出し、周辺住民を含め600人以上の被曝をもたらしたこの事故で、獅子奮迅の働きをしたのが、当時の安全委員長佐藤一男氏だった。 安全サイドに立って政府や事業者に厳しくものを申したせいか、歴代委員長の中でもごく短い2年の任期で職を離れた。 経産省や電力業界など旧態の 「原子力ムラ」 からは風当たりが強かったようだ。
 班目委員長にはぜひお願いしたい。 この事故に対する安全委のスタンス、評価と見通しをその職責を懸けて国民に伝えてほしい。 官邸の対策本部の一角というだけではない使命を安全委員会は帯びている。 酒場の喧嘩ではないが、班目委員長にはこう言いたい。 「表に出ろ!
   政府は要らざる事実を公表するとパニックを招くとでも思っているのだろうか。 パニックをもたらすのは、情報不足と誤った情報の流布である。 正確な事実、真実の提供はパニックを防ぐ。 そのためにも安全委は前面に出るべきだ。





( 2011.03.25 )


 放射能の飛散状況の推測結果を原子力安全委員会が23日夜、ようやく公表した。 福島第一原発事故が起こってから、安全委員会が会見をしたのはこれが初めてだった。 「総理および官邸に助言するのが第一」 として、みずから会見はしなかったという。

 しかし、放射能という目に見えない敵と日々闘っている人々がいま安全委に期待するのは、専門知識を生かしたアドバイスだ。 「黒衣に徹している」 ( 班目春樹委員長 )場合ではない。 世界中の専門家の力を借りながら、いまどう行動するのがいいのか、安全委は直接国民に語るべきだ。

 23日に公表されたのは、原発から放出された放射性物質の広がり方を、地形や気象データを踏まえて予測するSPEEDI( 緊急時迅速放射能影響予測 )の試算結果だ。

 米国やフランス、オーストリアなど海外の機関はこうした予測を事故直後から独自にインターネットで公開してきた。 「日本にもSPEEDIがあるのだから、早く結果を公表すべきだ」 という国民や専門家の声に押される形で、やっと公開に踏み切った。

 安全委は 「放出源がどうなっているかわからなかった」 ことを、公表が遅れた理由にあげた。 しかし、放出された放射性物質の種類や量が正確にわからなくても、大まかな広がり方がわかれば、余計な被曝をしない対策を考えるときに助かる。

 班目委員長は23日の会見で、今後は 「モニタリングのポイント数を増やすのが第一」 と述べた。 予測の精度をあげるためだが、そんなことを 「第一」 にしてもらっては困る。 予測結果が大まかなものであっても、それをいち早く人々のために役立てることの方が、はるかに大事だ。

 原子力安全委員会は国の安全規制の基本方針を決め、首相を通じて関係省庁を指導する権限をもつ。 経済産業省の組織である原子力安全・保安院による安全審査の妥当性をダブルチェックし、安全に万全を期す役割を担ってきた。

 安全委の委員は5人。 米国の原子力規制委員会( NRC )のように多くの研究者を抱え、強力な権限をもつ独立機関とは違うが、緊急時を想定した態勢は整えていた。

 しかし、今回の事故ではそれが機能していない。 国民は本当に困っている。

 いまの危機的状況を打開するには、専門家の力を結集するしかない。 専門家はみずから安全委に出向くときだ。 漏れ続ける放射性物質の行方、人体への影響の度合い、国民へのリスクの伝え方などについてさまざまな分野の 「知」 を集め、その時々で最善のアドバイスをしてほしい。

 内閣に危機管理監がいるように、安全委専属の危機管理監を任命することも考えてみるべきだ。





( 2011.03.25 )


 



 あらかじめ申し上げておきますが、私は日本の国民を脅かそうとか、危機意識を煽って風評被害を広げようなどという意図は全くありません。

 これから私が申し上げることが、起こらなければ結構。 幸いなことです。 でも、万が一起きてしまったら日本は取り返しのつかないことになります。 その前に、きちんと目の前にある事実と向き合い、対策を打つことが大切ではないでしょうか。




 なぜなら、福島第一原子力発電所で起きた今回の事故は、天災では決してなく、明らかな人災だからです。

 福島第一原発を襲った津波は想定を超えていたと、よくテレビや新聞では伝えられています。 NHKなどは 「100年に一度の想定外の地震と津波」 と、何度も何度も繰り返しています。 これはいったい何なのでしょう。

 NHKなどは想定外を繰り返すことで、国民にこれは避けられなかった災害であり国や地方自治体、東京電力には責任がないということを刷り込もうとしているのでしょうか

 でも、本当に想定外なのですか。 今回よりも地震のエネルギーが大きかったスマトラ島沖地震が2004年に発生しています。 この時のマグニチュードは9.3でした。 今回の地震よりもはるかに大きかった。

 この時、津波の高さは最も高かったところで49メートルだったと記録されています。 今回、東北地方を襲った津波の高さは最大15メートルとようやく推定が出ました。 津波に襲われた人がほとんど亡くなってしまったこともあり正確にはこれからも分からないかもしれない。




 しかし、スマトラ島沖地震では49メートルの高さになったのだから、日本でもこれくらいは最悪のケースとして想定しておくべきではないでしょうか。 日本にはそんな巨大な津波は襲ってこないと言う人がいるかもしれません。

 しかし、過去の事例を調べれば日本を巨大津波が何度も襲っている。 明治29年、1896年に発生した明治三陸地震というのがありました。 この時は、津波の高さが38メートルの高さになったと記録されています。

 わずか100年ちょっと前に起きているわけです。 この事実があるのに想定外とはどうなんでしょうか。 こうした津波が来る危険性を福島第一原発が想定していなかったとすれば、これは無責任な人災以外の何ものでもない。

 原発だけではありませんね。 岩手県宮古市の田老地区。 ここで津波の被害に遭った人たちは本当にお気の毒です。 ここは、明治三陸地震による津波の被害を受けて、日本でも屈指の防潮堤が造られていました。

 しかし、今回の津波はその防潮堤をはるかに乗り越えて町全体に襲いかかり甚大な被害を及ぼしました。 住人たちは 「防潮堤があるから大丈夫」 との油断があったと伝えられています。




 大きな建設費をかけて完成した防潮堤でしたが、今回のような津波は想定していなかったわけです。

 でも、過去には今回のような津波が現実として起こって、田老では防潮堤より高い14.6メートルを記録しているわけです。 人災以外の何ものでもないでしょう。

 実は、報道ではほとんど伝えられていませんが、この田老地区にはかつて田老原発の計画があったのです。

 その計画は潰れてしまったとはいえ、高い津波が襲う危険性があるところに原発を造ろうとしたわけですから、当然、想定はされているはずでしょう。

 だから、テレビの解説者や政府の人たち、東電の人たちが 「想定外、想定外」 を繰り返すのは明らかにおかしい。 想定外という言葉を安っぽく使ってほしくありません。 想定が全部できたことなのです。




 今回のような津波と原発の被害が想定できることは、昨年8月、『 原子炉時限爆弾』 ( ダイヤモンド社 )にありました。 強く警鐘を鳴らしていました。

 もし、本当に想定外だと言うのであれば、その人たちは専門家ではないことになるでしょう。 この本は、誰でも分かる原発の地震災害の可能性を指摘していました。 しかし、想定外を繰り返している人たちは、曲がりなりにも専門家と呼ばれる人たちですよ。

 さて、福島第一原発はこれからどうなるのでしょう。 この点は日本のみならず世界中の関心事だと思います。 経済産業省の原子力安全・保安院は、福島第一原発の事故を米国のスリーマイル島で起きた事故と同じレベル5に引き上げました。

 これで済むのか、旧ソ連で1986年に起きたチェルノブイリ原子力発電所のような大事故に発展するのか。 このところの動きを見ていますと、自衛隊や東京都の消防庁や各都道府県から応援に駆けつけた消防隊のおかげで小康状態を保っています。

 このまま、原子炉や使用済み核燃料の冷却が順調に進んで、これ以上の事故に発展しないことを心から願っています。 また現場で必死で作業に当たっている人たちには、本当に頭が下がります。 日本の宝とは、この人たちのことを言うのでしょう。




 しかし、現実は決して甘くありません。 心配するのはやはり原子炉です。 テレビではもう皆さん見飽きたかもしれませんが、原子力発電所の模型や仕組みを示した図が何度も登場しています。

 これを見る限り、原子炉の圧力容器内に冷却水を入れ、また使用済み核燃料を保存しているプールに水を供給している限り、大きな事故は起きそうもないような気がします。

 でも、テレビで示される図は、あまりに図式化されすぎています。 このポンチ絵と実際の本物とはかけ離れています。 例えば、原子炉のお釜の下には制御棒を出し入れする部分がありますよね。

 これがどうなっていると思いますか。 例えて言うなら、戦国時代の槍衾やりぶすまなんですよ。 何本もの槍が下からお釜に突き刺さっていると思ってください。 それだけではありません。 何本もの計器類もそこに挿入されているのです。

 そして、その下にはケーブルが走り回っています。 非常に複雑な構造をしているわけです。 そんな中に、冷却水として塩水を大量に入れたわけです。 何事もないと考える方がおかしいと思いませんか。




 原子炉や原子炉格納容器が破壊されて最悪の事態を迎える危険性は、十分に残っています。 別に脅かすわけで言っているのではありません。 そういう最悪の事態を想定しながら、今できることを着実にやっていく。 それが必要です。

 もちろん、専門家は分かっているはずです。 そして唯一の望みはやはり電源です。 1号機から4号機まで外部電源がつながったという報道がありました。 これは、事態改善の第一歩だと思います。

 電源をつなげて恒常的に原子炉と原子炉格納容器、そして使用済み核燃料のプールを冷却できるようにする。 これができれば、最悪の事態は避けられます。

 ただし、電源が来たからと言って、そのようにスムーズに進むと考えるのは楽観的すぎます。 大量の塩分が残っている中で、精密機械が果たしてきちんと機能するのか。

 また、現場には相当な放射能が降り注いでいます。 その中での作業は大変だと思います。 時間との戦い、放射能との戦いなんです。 しかしそれをやり切らなければ、最悪の事態に向かってしまう。




 そして、今回の事故で特徴的なのが、福島第一原発の1号機から4号機まですべて大被害を受けたということです。 スリーマイル島やチェルノブイリと大きく違う点がここにあります。

 4つある原子炉のうち、どれ1つとっても失敗できないということを意味しています。 万が一、どれか1つの原子炉でメルトダウンや再臨界が起きてしまったら、福島第一原発に誰も近づけなくなってしまいます

 そうなれば、残りの3つの原子炉の冷却作業を行えなくなる。 つまり、残り3つの原子炉もメルトダウンが避けられなくなるということです。 そうなれば、人類史上空前の原子力事故が発生する危険があります

 電源が回復して恒常的に原子炉全体を冷却できるようになる確率はどれほどでしょうか。 かなり薄氷を踏むような作業ではないかと思っています。

 簡単に成功する確率を1基当たり50%としましょう。 1つの原子炉で50%だったら、4つ全部成功させるには、2分の1の4乗ですから、6.25%の確率ということになります。




 1基80%の確率としても、4基全部成功するには41%の確率しかありません。 ことの重大性がお分かりだと思います。 これほどの危険性がありながら、想定外だとして今回の津波に対処できる対策を講じてこなかったのは、明らかに東電の経営幹部に責任があります。

 東電の幹部が記者会見に出て発言している姿を見て聞いて、本当に腹が立ちますね。 それに比べて、現場で作業している人たちは命をかけて取り組んでいる。 日本を救うために。 現場の人たちの力を信じたいですね。 いや信じるしかありません。

 ついでに厳しい見方を言えば、日本の原子力の専門家たちは炉心溶融、メルトダウンは摂氏2000度を超えないと発生しないと言っていますが、フランスの原子力学者は600度を超えるとその可能性があると発言しています。 そのことはかつてNHKの番組でも放送していました。

 いま福島第一原発で本当に何が起きているのかは、外からは分かりません。 とにかく、現場での冷却が成功することを祈るのみです。

 ところで、この福島第一原発は、1971年の3月26日に運転を開始しています。 そうです。 運転開始から40年が経つわけです。 米国では法律で、40年経った原子炉は廃炉にすると決めている。


退

 ところが、日本は昨年、この原子炉を60年運転すると決めています。 これも理解不能ですね。 だって、考えてみてください。 40年という月日をです。

 実際に原子炉が建設を始めたのは1960年代末でしょう。 その頃の技術者は誰一人残っていません。 とりわけ、1号機は米GE製です。 そんな設計者もいない、そして図面も残っていないと聞いています。

 そんな細かい技術が分からなくなった原発を20年も延命させて運転させるというのは、狂気の沙汰ですよ。 設計した技術陣がいなくなったら廃炉にするのが常識です。

 原子炉というのは非常に複雑であり、当初の設計から変えている部分もある。 設計者にしか分からないことも多いのです。

 さて、もう1つ言いたいのは、福島第一原発のことではありません。 日本にはこれと同じように怖い原発が存在しているということを、日本の国民は知るべきです。




 それは静岡県御前崎市にある浜岡原発です。 今回、東日本で歴史的な地震が発生しましたが、ついこの前、静岡県沖でも大きな地震が発生したでしょう。 ついに始まったかと思い、心配になってしまいました。

 詳しくは『 原子炉時限爆弾』 をお読みいただきたいのですが、明らかに太平洋プレートの大きな変動が始まっています。 それは国土地理院のデータから素人が調べても明らかです。

 スマトラ島で起きた大地震、そしてチリの大地震、バヌアツで起きた地震。 全部相関関係があるのです。 東海大地震はいつ起きてもおかしくないと言われていますが、私が調べたデータでは、まさにその時期が近づいている。

 御前崎の浜岡原発は、フィリピン海プレートがユーラシアプレートに沈み込む、まさに巨大海底断層の上に立つ原子力発電所です。 ここでもし巨大地震が発生したら、どうなるでしょうか。

 福島第一原発とは様相が全く異なると思います。 福島の場合には沖合いの深いところで発生した地震でした。




 マグニチュード9.0と言いますが、これは、気象庁が勝手に尺度をモーメント・マグニチュードに変えてしまったために大きな数字になっただけで、実際には、従来の気象庁マグニチュードで8.4です。

 その巨大な地震エネルギーの割には、揺れによる被害はそれほど大きくありませんでした。 被害の大半が大きな津波によるものでした。

 ところが、今後発生が懸念されている東海大地震の場合には、阪神大震災のような直下型になる危険性が高い。 阪神大震災のマグニチュードは7.3ですから、地震のエネルギーとしては今回の約45分の1です。

 それでもあれだけの被害を出したのです。 しかも東海地方は4つのプレートが集まったところです。 一重ではなく四重に入り組んだプレートの上に原発が立っているのです。 そこで阪神大震災以上、現在予想されている揺れでその数十倍にもなる直下型地震が起きたら、どうなりますか。

 今回の福島第一原発の事故は、想定されたものですが、それを防げなかった。 その責任は置いておいて、ではこれから何を学ぶかが大切です。 日本中の原子炉の安全基準を一斉に見直さなければならないのは当然でしょう。

 3月15日。 震災の発生から4日が経って、実は中部電力はこっそりと安全対策の引き上げを発表しています。 12メートルの津波に耐えられる堤防を造るそうです。 福島が5メートルですから、慌てて対策に出たことが分かるでしょう。 もちろん、それで万全な対策になるはずはありません。

 しかし、堤防だけの対策で東海地震から原発事故は免れません。 できるならば今すぐに原子炉を止めて、万が一の地震に備えるべきでしょう。 電力不足が懸念されていますが、中部電力の火力発電所は十分にあります。

 停電よりも原発事故は、何倍どころか何百倍、何千倍も怖いということの認識が必要です。





( 2011.03.29 )
保安院


 経済産業省原子力安全・保安院は29日、福島第1原発の敷地内からプルトニウムが検出されたことについて 「燃料に一定の損傷があって本来の閉じ込め機能が壊れていることを示しており、非常に憂える事態だ との見解を示した。

 保安院は、東電が土壌を採取した21~22日の段階で、既に燃料が損傷していた可能性があると指摘。 一方、今回検出された濃度は、過去の核実験に伴い国内で観測されたレベルと同程度で、健康に影響を与えるものではない としている。





( 2011.03.29 )





 東京電力福島第1原子力発電所の土壌から毒性の強いプルトニウムが検出され、健康や環境への影響に不安が高まっている。 濃度はごく微量で作業員を含め人体への影響はないという。 ただ、外部漏出は、原子炉内の燃料棒が高熱で深刻なダメージを受けたことを裏付けるものだ。 漏出元や経路も特定できていない。 これ以上の漏出を防ぐための監視と対策が急務となっている。

  「高温で発生し重さもある。 それが出るくらい燃料が損傷し、本来の閉じ込め機能が破られた」

 経済産業省原子力安全・保安院は、事態の深刻さに危機感を強めている。

 燃料を閉じ込めるペレットからプルトニウムが溶け出す温度は2700度程度と極めて高い。 漏出は、燃料棒を覆うジルコニウム合金製の 「被覆管」 が溶けるとされる1200度程度を大きく上回る温度に上昇し、深刻な損傷を受けた可能性を示している。

 燃料棒の間には、震災時に中性子を吸収する制御棒が装填そうてんされており、核分裂は止まっているので新たなプルトニウムは生成されていない。 ただ、運転時に生成されたものの漏出が続く恐れは否定できない。

 問題となる漏出経路について、大阪大の宮崎慶次名誉教授( 原子力工学 )は、 「プルトニウムが溶けて水と接するとこまかい粒子状になり、これが水の蒸発といっしょに周りに出ている可能性がある」 と指摘する。 酸化物となったプルトニウム粒子は質量が重く、30キロ以上飛ぶことは考えにくいとしている。

 また、原子炉内から漏れ出たとみられるタービン建屋地下にたまっている高濃度の汚染水に含まれている可能性もあるが、東電は現時点で調査していない。

 どこから漏れているかも不明だ。 プルトニウムは発電時のウランの核分裂に伴って生成され、4年間の使用後で燃料全体の最大1%程度になる。 3号機で使われているプルサーマル用のプルトニウム・ウラン混合酸化物( MOX )燃料棒には3~4%含まれている。 1、2号機の燃料棒にも1%以下で含まれており、東電は 「どの原子炉か分からない」 とする。

 貯蔵プールの使用済み燃料から漏出している恐れもあるが、東電や保安院は損傷している可能性は低いとみている。

 作業への影響では、プルトニウムが出す放射線は透過力が弱く、紙1枚で遮れるレベルだ。 ただ、肺に取り込まれると発がんの危険性があり、宮崎教授は 「放射線被曝と同時に内部被曝の防止も徹底する必要がある」 と警告している。

           ◇◇◇
【 プルトニウム 】ウランが中性子を吸収して生成される。 寿命( 放射線の半減期 )が長く、代表的な239は約2万4千年。 アルファ線と呼ばれる放射線は透過力が弱く、空気中でもほとんど拡散せず、水の外には出ない。 呼吸などで体内に入ると、肺にとどまってがんを引き起こす危険性がある。 核燃料として利用できるほか、核兵器にも転用できるため、国際的に厳重に管理されている。





( 2011.03.29 )
福島原発

 



 大地震の影響で損傷した東京電力の原子力発電所が危機に陥った2週間前、同社の清水正孝社長はこの事態を完全に天災のせいにした。 安全を確保するためのシステムを破壊した高さ14メートルの津波は 「想定外」 だったと述べたのだ。

 しかし今、この東電の想定に厳しい視線が向けられている。 現在も周辺に放射能をまき散らしている同社の福島第一原子力発電所がある地域で巨大津波が発生する可能性があることを、日本のトップクラスの地震学者がつい2年前に繰り返し強調していたことが明らかになったからだ。

 原子力安全・保安院が主催し、東電の社員も出席した安全性評価会議で、地震学者の岡村行信氏は、福島第一原発の設計の想定に疑問を投げかける調査結果があると警告していた。




 原子力安全・保安院のウェブサイトで公開されている議事録によれば、岡村氏は2009年6月に開かれたこの会議で、 「津波に関しては …… 全く比べ物にならない非常にでかいものが来ているということはもう分かっている」 と述べた。

 津波に関する東電の想定、そして海底地震により引き起こされることの多い波に対処しようと同社が築いた防潮堤は、福島第一原発の運命を左右する重大なポイントになった。 原発は3月11日のマグニチュード9.0の大地震を耐え抜いたが、約1時間後にやってきた津波が高さ5.5メートルの防潮堤を乗り越え、非常に重要なディーゼル発電機を破壊したからだ。

 発電所の海側に設置されていたこれらの発電機は、原子炉とその隣の貯蔵タンクの中にある高温のウラン燃料棒の周囲に冷却水を循環させ続けるためのものだった。 地震から1日と経たないうちに燃料棒の一部が過熱状態になり、爆発性のある水素ガスや放射性物質を大気中に放出させることになった。

 産業技術総合研究所の活断層・地震研究センター長を務める岡村氏は、原子力安全・保安院の前述の会議で、福島第一原発の設計者が考慮した1938年の津波では小さすぎるかもしれないと指摘。 その証拠として、西暦869年にこの地域をもっと大きな津波が襲っていることを挙げた。

 出席していた東電の担当者は、869年の地震では被害がそれほど見当たらないと応じたが、岡村氏は、信頼できる史料にはこの津波で 「城が壊れた」 という記述があると反論していた。

 東電は福島第一原発の運転を40年前に始めて以来、コンクリート製の防潮堤に一切手を加えていない。 また監督当局は昨年、この発電所で最も古い1号機( 1971年運転開始 )について10年間の運転継続を認可していた。




 岡村氏は英フィナンシャル・タイムズの電話取材に対して、福島で起き得る津波の規模に関する警告は、研究所が作った869年の津波のモデルに基づいていると語った。 2005年以降、科学的調査で津波が残した堆積物を分析することで、この災害に関する歴史的な記述が裏づけられたという。

 岡村氏は、この地域の津波が、原発の設計が考慮した規模を超える可能性があるという証拠に従って東電が行動しなかったことに腹が立ったと言う。 「私が指摘した時に東電が即座に対応したとしても、すべての被害を防げたかどうかは分からないが、彼らは対応すべきだったと思う」

 869年の災害が示唆するリスクを安全性評価報告に盛り込むべきだという再三の提案にもかかわらず、東電と原子力安全・保安院の担当者は、この問題についてはさらに検討すると述べるにとどめた。

 東電は、同社がこの問題を深く追究するのに消極的だったのは、単に、会議の主な議題が地震の地質学に関する別の技術的問題だったからだと話している。 「我々は津波の問題を無視したわけではないが、それについて議論するのに適切な場だと思わなかった」 と、同社の代表者は言う。

 しかし同氏は、津波のリスクを議論するのに相応しい場がどこだったのかは分からないとつけ加える。


姿

 中部大学の原子力専門家である武田邦彦教授は、原発の計画に携わる地震学者は決まって、地震と津波のリスクを過小評価すると指摘する。 今回、地震が日本の原発を損傷させたのは、4年間で2度目のことだ。 これらの原発は、結果的に必要であることが判明した厳格な基準に満たない仕様で建てられていた。

 2007年7月には、東電の柏崎刈羽原発( 原子炉7基を備えた世界最大の原発 )が、日本の北東部で起きたマグニチュード6.6の地震の後に少量の放射線漏れを起こした。 柏崎原発は後に、それまで確認されていなかった地質断層線の上に建てられていたことが分かった。

 地震を正確に予測することは不可能だが、批評家は、楽観的なリスク評価は、従来型のエネルギー資源をほとんど持たない国で原子力発電を強く支持する当局の姿勢を反映していると述べている。

 彼らによれば、反対意見は無視されたり、政府が選んだ委員会でまとめられる報告書で軽視されたりするという。 「地震学が間違っていたら、その後のすべてが間違っていることになる」 と武田氏は話している。


【 議事録の一部抜粋 】

 以下は、2009年6月24日に開催された原子力安全・保安院の会議の議事録( PDF )からの抜粋。 この会議の席上、地震学者の岡村行信氏が福島第一原子力発電所を含む各地の原発について、地質学上の脅威に対する安全性を審査した。
岡村氏:全く比べ物にならない非常にでかいもの( 津波 )が来たことはもう分かっています。 それに全く触れられていないのはどうしてなのか、お聞きしたいんです。
東京電力担当者:( 869年の )貞観地震については、被害がそれほど見当たらないということが1点あると思います。
岡村氏:被害がないというのは、どういう根拠に基づいているのでしょうか。 少なくとも、この地震に関する信頼できる記述は日本三大実録( 歴史的な文献 )だけだと思うんです。 それには城が壊れたという記述がある。 だから、そんなに被害が少なかったと判断する材料はないのではないかと思うんですが。
東京電力担当者:すみません、ちょっと言葉が断定的すぎたかもしれません。 ご案内のように、歴史地震ということもありますので、今後こういったことがあるかどうかは研究課題として捉えるべきだと思っています。 しかし、耐震設計上考慮する地震ということでは、福島地点を考える際には、( 1938年の )塩屋崎沖地震で代表できると考えたわけです。





( 2011.03.31 )

 



 検出されたプルトニウムは、乾燥した土壌1キログラムあたり最大で0.54ベクレルと東京電力は発表した。

 この猛毒プルトニウムの検出は世界中に衝撃を与えた。 BBCは速報を流し、ル・モンドもさらなる核汚染の危険性を伝えている。

 世界中のほとんどの新聞・テレビが、一面トップかあるいはトップニースで伝える中、相変わらず日本の大手メディアだけが、このニュースを矮小化して伝え続けている。

 今回もまた、大手メディアや大物評論家、あるいは会見に一度も来たことのないジャーナリストたちが、御用学者たちが声を揃える 「α線であるため、紙一枚で防げる」 「比重が重いために遠くまで飛ぶことはない」 とプロパガンダにまんまと乗っかり、悪質な 「安全デマ」 をばら撒いている のだ。



 


 たとえば、きょうの新聞の記事もこの始末である。
 




 東京電力福島第1原発の敷地内の土壌から、毒性の極めて強いプルトニウムが検出された。 どんな意味があるのだろう。
Q:プルトニウムの特徴は。
A:人体への影響が極めて大きいアルファ線を出し、呼吸などで体内に入ると骨や肺に沈着して、強い発がん性を帯びるため非常に厄介だ。 同位体のうち、代表的なプルトニウム239の半減期は約2万4千年と非常に長く、体内に入ると放射線を出し続け、排出されにくい。 核分裂を起こし膨大なエネルギーを出すため、核兵器の材料にもなる。
Q:アルファ線とは。
A:透過力が弱く、空気中では3センチも進めず、水も通り抜けられない。 しかし、人体に入ったときの影響力はヨウ素などから出るガンマ線の約20倍とも言われている。
Q:健康への影響は。
A:今回検出されたうち、事故の影響と考えられるプルトニウム238の濃度は、2地点のうちの高い方で土壌1キロ当たり0・54ベクレル。 東電は 「通常の土壌中の濃度と同じ。 人体に問題になるものではない」 と説明している。 経済産業省原子力安全・保安院や専門家も、ただちに健康に影響はないとの見解だ。
Q:どこまで放出されているのか。
A:プルトニウムは重い元素であり、遠くには飛びにくいと考えられている。 ただ、今回は原子炉建屋の外でも高濃度の放射性物質が検出されており、専門家は 「動向をチェックすることが必要だ」 と指摘。 東電は今後も土壌を定期的に採取して調べるとしている。
Q:今回の事故でこれまでに検出されたヨウ素やセシウムとはどう違うのか。
A:気体となって放出されるヨウ素やセシウムと違い、プルトニウムは沸点が約3232度と非常に高く、気体状になる前に溶け出したと考えられる。 これは、損傷した燃料そのものが水に混ざって外に出ている可能性があることを意味し、より深刻な状況になったといえる。
Q:どこから出てきたのか。
A:3号機ではプルトニウムにウランを混ぜた混合酸化物( MOX )を燃料にするプルサーマルを実施しているので、ここから出た可能性がある。 ただ、プルトニウムは原子炉内でウラン燃料が中性子を吸収すると生成されるため、ほかの号機の燃料にも含まれている。 現時点では出所の特定は難しい。
Q:今後の対策は。
A:これ以上放出が続かないようにしなければならない。 燃料が損傷するのを抑えるため、原子炉や使用済み燃料プールの冷却をこれまで以上に強化し、封じ込めることが求められる。


調

 少し考えれば、 「α線で遮断しやすく、遠くまで飛ぶことはない」 と 「プルトニウムの危険性」 が別問題であることは誰にでもわかる。

 にもかかわらず、なぜ安全性を強調しなければならないのか。 そもそもプルトニウムの測定の単位だけが、これまでの放射性物質の測定の 「一平方メートル当たり」 ではなく、 「一キログラム当たり」 になっているのも不思議だ。

 大気に撒かれた放射性物質が深く土の中に潜るのには当然に時間がかかる。 なぜ表面ではなく、土壌を掘り起こしての計測になるのか。 パソコンの前に座ってばかりいる“ITジャーナリスト”に調べてもらいたいものだ。

 また、プルトニウムは肺に入らなければ安全で問題がないとするような 「安全デマ」 報道も続いている。

《 東京電力によりますと、検出されたのは、プルトニウムの仲間でプルトニウム238と239、それに240の3種類でグラウンド付近の場合、このうちのプルトニウム238が1キログラム当たり、およそ0.54ベクレル検出されました。 この濃度は、国内の通常の土壌に含まれる濃度や、過去に大気圏内で行われた核実験で国内に降ったプルトニウムの濃度ともほぼ同じレベルです。 仮に同じ濃度の食べ物を1キログラム食べたとすると、被ばく量は成人の場合、50年で0.12マイクロシーベルトになります。 これは一般の人が1年間に浴びても差し支えないとされる1ミリシーベルトの8000分の1ほどの値です 》( 29日/NHKニュース )。

 テレビに登場したある原子力の専門家は、もっと直接的な表現でこれを説明したという。 「仮に、プルトニウムを食べたとしても、命に別状はありません。 よって神経質になる必要はありません。 デマを信じないでください」 ( 元動燃職員 )




 「頼れる仲間プルト君」
 さらにかつてその動燃が作った宣伝ビデオ 「頼れる仲間プルト君 ― プルトニウム物語」 では、アニメ主人公のプルト君に次のように言わせている。

「ぼくについての誤解は猛毒でがんになるということです。 ぼくは長い間α線を出し続けます。 でも、このα線は紙一枚でもさえぎることができる放射線です。 飲み込まれて胃や腸に入った場合でも、ほとんどが排泄されて身体の外に出てしまいます。 プルトニウムが原因でがんになったことは一件もありません。 プルトニウムが人体に影響を与えることは考えられません」

 ビデオではこの説明とともに、トイレの絵とともに 「サッパリ スッキリ」 、 「安全」 という文字が表示される。
 ( http://www.youtube.com/watch?v=bJlul0lTroY&feature=player_embedded

 このテレビやアニメをみて 「では、是非とも食べていただきたい」 と思ったのは私だけではあるまい。

 24時間体制で東電本社や保安院に通い、政府・東電の隠蔽体質を追及してきた自由報道協会所属のフリーランス記者たちも、核汚染の怖さを知っている欧米の記者たちも同様の反応を示した。

 そして何より、原発周辺に住み、いまなお不安な避難生活を送っている地域住民は、さらにそう思っているに違いない。




 29日、 「ニュースの深層」 ( 朝日ニュースター )に出演した名古屋大学医学部の太田勝正教授はプルトニウムが人体に与える影響についてこう語った。

「そうですね、世界中でプルトニウムが恐れられている理由には内部被曝の問題があります。 空気中に舞ったり、飲食物と一緒に体内に取り込んで、その粒子を吸い込んでしまって肺に到達しその内壁に付着した場合は、半永久的に放射線を出し続けることから、かなりの確率でがんになるリスクが高まり、危険と言えるでしょう」

 太田氏も指摘した通り、プルトニウムが危険だといわれる理由は、その長い半減期にもあるだろう。

 世界中ではプルトニウムの検出をもって、いよいよ日本は取り返しのつかない原発事故を起こし、政府はコントロールが失いかけているとみ始めている。

 欧米、とくにフランスを筆頭とした国々は、日本のことを悲惨な震災に見舞われた被災国というよりも、原子力エネルギーを管理できない核犯罪国家とみなし始めている。

 このままではG8の一員である先進国としてどころか、放射能汚染を放置する無政府状態の最貧国として扱われる日が近いのかもしれない。

 それでも、東京電力と政府と大手メディア、そこに群がる御用評論家たちは、プルトニウムは 「危険ではない」 と強弁している。

 最後には、日本人はプルトニウムに耐性があるのだ、などと言い出して、これ以上、世界に恥をさらさないことを祈るばかりだ。





( 2011.04.18 )

  


 経産省原子力安全・保安院の西山英彦審議官は18日の記者会見で、1~3号機の核燃料が 「溶融していると思われる」 と述べ、内閣府の原子力安全委員会に報告したことを明らかにした。

 保安院はこれまで、核燃料の損傷が3%以上としてきたが、 「溶融」 との見解を出したのは初めて。

 保安院は炉心の壊れ具合によって3段階に定義されると報告。 「炉心損傷」 は、焼き固めた燃料( ペレット )を覆う金属の被覆管が壊れているが、燃料体の形は崩れていない状態。 ペレットの一部が溶けだしている状態を 「燃料ペレットの溶融」、溶けた燃料が下に落ちていくのを 「メルトダウン( 炉心溶融 )」 とした。

 その上で、 「ペレットが溶融している」 とした理由について、2、3号機は 「ペレットが溶融して生じる放射性物質が高濃度の検出された」 ことを、1号機は 「水素爆発に至った」 ことを挙げた。





( 2011.05.16 )

 題」


 経産省の原子力安全・保安院は4月12日、今回の福島原発事故をINES( 国際原子力事象評価尺度 )レベル5から深刻な事故=レベル7に修正した。 問題は、発表した時期とその目的だ。
 まず、発表時期の遅れが自治体や学校、企業の対応の遅れを招いた 可能性がある。 個人の被曝量は後から加算され蓄積するものだから、危険度が高いことが初めから知らされていれば、高濃度の放射性物質が放出された直後に迅速に避難して蓄積を減らすこともできたはずだ。 政府の情報開示と危機管理は拙劣にすぎる。
 しかも、保安院と東電は専門家が事故経過を把握するための情報をいまだ開示していない。 それゆえ、国内の科学者の知恵が今も結集できずにいるのだ。
 事実、海水の塩分が炉心水流を妨げることを米紙ニューヨークータイムズ( 電子版 )が3月23日に報じた3日後、政府は慌てて真水に切り替えたが、その7日前に物理学者の槌田敦氏が直訴した同じ警告は無視されている。 断片的に発表される核種分析で、複数の科学者が 「すでに再臨界に入ったのでは?」 と懸念する今も、基本情報は閉ざされたままだ。
 最悪の事態として想定される 「再臨界 → メルトダウン → 水蒸気爆発」 の危機回避と情報開示について、同氏は 「情けない話ですが、どちらも解決することはないでしょう。 米NRC( 原子力規制委員会 )がしびれを切らして命令し、それに従うだけだと思います」 という。
 次に、発表の目的の問題とは、政府の巨大災害認定で東電の補償責任が免責されうる ことだ。 原発事故レベルの引き上げだけではなく、政府は地震規模もM8.8からM9.0に修正している。 事故原因と事故レベルが巨大であれば、原賠法( 原子力損害賠償法 )の例外規定 「政府が必要な措置を講じる」 が適用しやすくなり、東電の賠償責任は免責、被害者補償はすべて政府負担となる。 津波への冷却システム保全の不備を放置し続け、その後も3桁にのぼる機器類の点検洩れが露呈した今回の事故に、この例外規定が無条件に適用されれば、東電は補償責任から解放されることになる。
 被害者救済に不足があれば国庫出動で補うべきだが、まずは事故収束策と、今後二度と繰り返さないための加害者責任の所在が問われている。 東電が巨額の内部留保を含む全資産で償わなければ、被害者も国民も納得しないだろう。


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