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( 2011.04.13 )

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 10兆円とも20兆円とも見積られる復興資金。 その調達のため、血の浄む努力を強いられる日本経済を、さらに脅かすものがある。 09年9月、国連の気候変動サミット開会式で鳩山由紀夫総理( 当時 )が高らかに宣言 した 「2020年までに1990年比で25%」 という温室効果ガス( C02 )の削減目標である。

 「( 25%削減は )年限、削減量とも見直し対象になる」
 バンコクでの国連・気候変動枠組み条約作業部会に出席していた環境省の南川秀樹次官は、4月3日、日本メディアにそう明かした。 枝野官房長官もそれに同調し、見直し論は政府内で一気に高まりつつある。 確かに、25%の削減目標は、C02を排出しない原発9基の増設と稼働率85%を前提としたものだった。
 「ところが、今回の原発停止の影響でC02排出量は減るどころか、年2100万トン、90年比で1.7%増えると試算されています」
 解説するのは、通産省で京都議定書の担当課長も務めた、21世紀政策研究所研究主幹・澤昭裕氏である。
 「元々、各国議会が批准し、罰則規定もある京都議定書とは違い、この25%削減は 鳩山前総理が具体的な試算も根拠もないまま発表してしまったもの ですしね」
 その“困った約束”を、震災を口実に反故にしたい気持ちはよく分かるが …… それがすんなり受け入れられるほど世界は甘くはない。 国際政治学者で参院議員の浜田和幸氏が指摘する。
 「世界のトップが集う場で総理自ら公言したことですから、取り下げれば国家としての無責任さを問われかねない。 25%までいかなくとも、新しい枠組みの中で、他国より不利な条件を押し付けられる可能性は十分ある。 しかも、日本の苦境は、中国など他国のチャンスです。 ここぞとばかりにC02排出枠を売りつける国も出てくるかもしれません」




 仮に、25%の削減目標を受け入れざるを得なかった場合、どんな不利益が生じるのか? 先の澤氏が試算してくれた。
 「09年11月に政府の専門家会合が経済への影響を検証した結果、国内で排出量を減らすより、海外から排出枠を買う方法が最も安価だと判明しました。 そこで、25%中20%を海外からの排出枠購入でまかなうとします。 基準となる90年のC02排出量は12億6100万トンだから、20%で2億5220万トン。 EUの排出枠市場の実績から1トンあたり20ユーロ(約2440円 )で計算すると、約6154億円。 しかも2020年が近づけば駆け込み需要が増し、排出枠の高騰も予測される。 実際、EU市場は今回の原発事故に敏感に反応、価格は急騰しました。 最悪の場合、排出枠という実体のないものを買うだけで、毎年1兆円 近くが海外に出ていく 可能性さえあるんです」
 経済評論家・山崎元氏は、こう断じる。
 「すでに日本は“放射性物質を大気中や海にばら撒き、適切な対応も情報公開もできない、とんでもない国”と思われている。 これ以上、傷口を広げないためにも、“あの25%削減宣言は間違いでした”と、きちんと頭を下げ、思い切り恥をかくしかありませんね」
 









( 2011.06.09 )
西
 


 関西や九州など西日本でも今夏には深刻な電力不足となる懸念が深まっている。 東京電力福島第1原発事故に伴い、定期検査を終えた全国の原発が地元の合意が得られず、再稼働できない状態が続いているためだ。 全国の原発立地道県でつくる原子力発電関係団体協議会の三村申吾会長( 青森県知事 )は8日、海江田万里経済産業相と会談し、中部電力の浜岡原発以外の運転再開を認める判断根拠を示すなど8項目について、 「原子力発電の安全確保に関する要請書」 を手渡した。 ただ、安全確保について政府の明確な判断は示されておらず、夏の電力需要ピークを前にタイムリミットが迫っている。

 同協議会との会談で海江田経産相は 「( 自治体には )緊急対策について国が責任を持つとお伝えしている」 と応じたが、国の安全基準に不信感を募らせる自治体との間で、事態は膠着こうちゃくしたままだ。

 仮に原発がこのまま再開できなければ、経産省によると関西、北陸、中部、四国、九州の西日本5電力で今夏の予定供給力の11%に相当する880万キロワットの供給力が減少。 このため、東電や、浜岡原発を止めた中部電への電力融通も困難となる。

 電力需要に対する供給余力を示す予備率は、通常は8%以上必要とされる。

 経産省によると定検中の原発が再稼働できなければ今夏の予備率はすでにマイナスの東電、東北電力に加え、西日本5社も0.4%と緊迫状態に陥る。 なかでも、関電( マイナス6.4% )、九電( 1.6% )は需給調整が必要なレベルとなり、今夏の電力不足は全国規模に拡大する。 全国的な電力不足は、震災や節電の影響で東日本から西日本に生産シフトを進める企業にも打撃を与える。

 原発の長期停止は、電力会社のコストアップにもなる。 経産省の試算では、停止中の原発を火力発電で代替すると、燃料費のコスト増は9電力全体で今年度は1.4兆円にものぼる。

 このままだと来春には全国54基の原発がすべて止まる事態となり、資源エネルギー庁幹部は 「震災復興と日本経済の足かせになる」 と危機感を募らせている。





( 2011.06.12 )

 


 東京電力福島第1原子力発電所事故の影響で、地球温暖化対策の国際的な枠組み 「京都議定書」 の目標達成が困難になっている。 原発の代替電源として二酸化炭素( CO )を排出する火力発電所の稼働が増えたためだ。 目標達成のためには海外との排出量取引を増やす必要があるが、 取引価格は国際的な脱原発の流れを受けて高騰。 このため千億円単位の負担増となる可能性もあり、 政府や電力会社は電気料金などへの転嫁を検討する見通しだ。

 温暖化対策では2020年までに排出量を25%削減するとした国際公約 も困難視され、目標撤回が検討されているが、12年までの対策を示した京都議定書までも果たせなければ、国際交渉での日本の発言力はさらに低下する恐れがある。 ただ、すでに原発事故の損害賠償や火力増強に伴う燃料費負担増を賄う値上げも必要とされる中で新たな国民負担を求めれば、大きな反発を招くことは確実だ。




 日本は京都議定書で、08~12年の温室効果ガス排出量について、1990年と比べ平均6%削減することを約束した。 09年度( 10年3月期 )は景気低迷もあって目標より4500万トン多く削減できたが、10年度は景気回復でCO排出量が増えたもよう。 11年度も原発事故に伴う火力増強や復興需要で 「排出量が増える」 ( 環境省 )とみられる。

 経済産業省などの試算では、原発1基( 135万キロワット )を石油火力発電に置き換えると、CO排出量は年600万トン増える。震災後に運転再開が困難になった原発は福島第1・第2原発や東北電力女川原発、中部電力浜岡原発など少なくとも17基。 これだけでも総出力は計1598.7万キロワットに上り、単純計算すると年約7千万トンの排出増だ。

 排出削減に活用できる方法として、海外から購入した排出枠を削減実績とみなせる排出量取引制度があり、日本政府が東欧などから約1億トンの排出枠を買っているほか、電力会社も年間で合計5千万~6千万トン以上を購入。 排出増に伴ってその動きが加速するとみられるが、問題は価格が上昇していることだ。




 国際協力銀行( JBIC )によると、国内での取引価格はCO 1トン当たり1200~1500円台で推移してきたが、東日本大震災後は一時1600円程度に跳ね上がった。 欧州ではドイツが脱原発政策を打ち出したため高騰し、15~17ユーロ( 約1750~1980円 )で取引されている。

 バークレイズ・キャピタルの環境市場調査責任者、トレバー・シコルスキー氏は 「今後もエネルギー会社が取引を増やし、12年には24ユーロ程度になるだろう」 と指摘しており、原発停止に伴うCO排出増を賄うためには 数千億円規模の負担増 となる可能性もある。

 


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