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《 極秘資料が暴く 》
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 東京電力の福島第1原子力発電所の事故の損害賠償をめぐり、政府が賠償スキームの根拠とした極秘資料がある。 詳細を分析すると、国民だけに負担を強いる賠償スキームのいびつな構造 が浮かび上がった。 与党内からも批判が噴出し、その法案成立には暗雲が垂れ込めてきた。
 政府は東電の賠償スキーム決定を1日先送り、5月13日に正式発表した。 「せっかく救済案をまとめたというのに、このままでは東電が倒産してしまう」
 5月中旬、金融政策に詳しい民主党の中堅議員は、こんなことを口にした。 東京電力の経営破綻が現実のものとなりつつあると感じていたからだ。 そんな事態になれば、金融市場は大混乱に陥りかねず、危機感を強めていたのだ。

 政府は、東電の福島第1原子力発電所事故をめぐる損害賠償が巨額になることを受け、賠償を支援するスキームの策定を急いでいた。 5月に入ってからは閣僚間で詰めの作業を進め、13日に正式な政府案として発表する。

 その中身は、一義的には東電が賠償責任を負うものの、賠償額が大き過ぎて支払えなくなった場合には、官民で新設する賠償機構に投入した資金を使って支援するというものだ。

 ところが、政府内の了承も取り付け、あとは開会中の通常国会に法案を提出するのを待つだけだというのに、民主党内は大混乱に陥っていた。

「賠償は国が責任を負うべき」
「もっと東電のリストラを進めるべきだ」

 政府案の発表後も、国や東電の責任をめぐって異論が噴出。 民主党内の意見は大きく分かれ、今もなお党内には不満が燻り続けているのだ。

 それもそのはず。 民主党内での議論は、政府案発表の直前にしか行われておらず、党内調整は皆無に等しかった そればかりか、 「政府案への賛成が大前提で、まさに結論ありきの出来レース」 ( 党幹部 )だったため、多くの議員が納得しないまま公表されてしまったからだ。



 


 確かに、与党内から異論が出るのも無理のない話。 政府案の中身を詳細に分析すれば、じつに多くの火種を内包したものであるかが明らかだからだ。 その足がかりは、入手した内部資料にある。

 これは、政府案を作成する際、東電の将来の財務状況について政府内部で独自に試算したシミュレーション。 ペーパーの右上には、 「会議後回収」 の判が押されており、政府高官しか目にしていないものだ。

 その中身を理解するために、まずは賠償スキームの詳細について触れておく。 まず、被害者への賠償金の支払いを官民で支援する 「賠償機構」 を設立、この機構に銀行が融資を行い、その融資には政府保証を付ける。

 機構には、東電を含む原発を保有する電力会社も負担金を拠出、政府も現金と同義の 「交付国債」 を発行して機構に注入する。 こうして資金が集まった機構が、東電の優先株を引き受けるなどして、東電に資金援助するかたちだ( 右図参照 )。

 そのうえで、今度は下の表に目を転じていただきたい。 これはシミュレーションのポイントをまとめたもの。 試算の前提条件として、被害者への賠償金を10兆円と仮定し、2011年度から5年にわたって年間2兆円ずつ支払う ことにしている。 その資金は機構から援助されるが、東電は機構に対し、負担金というかたちで25年かけて返済 する設定だ。

 

 そのため出発点として、この資料には、 「社債でのリファイナンスがメインストーリー」 とある。 つまり社債を発行し、自ら資金調達できる状態にまで自立することがゴールとされているのだ。

 それゆえ、東電が15年度から社債を7000億円発行すると想定( ① )。 そのためには、前年度には黒字化しなければならないし( ② )、社債発行には格付けでA格が必要。 そこで、自己資本比率が最低でも10%を維持していなければならないと考えている( ③ )。

 11年度に10兆円の賠償金が負債に乗ると、東電は即、債務超過に陥る。 そのため、 「機構宛請求権」 なるものを資産側に同じ額だけ計上して相殺している。

 資産と負債に等しい額を乗せても、維持しなければならない自己資本比率は引き下がるから、11年度に機構が優先株を引き受けるかたちで1兆8000億円、資本注入することにしている( ④ )。

 それでもなお、原子力発電の代わりとなる火力発電の燃料費がコストを押し上げるため、12年度末には自己資本比率が10%を下回る危険性がある。 それを回避するためには約1兆円の電気料収入の増加が必要で、その多くを電気料金としていとも簡単に転嫁するとしている( ⑤ )。 こうした“荒業”を使わなければ、社債の発行やリファイナンスもままならず、東電は破綻の憂き目に遭う。 そうならないように、さまざまな数字を“創作”したものといえるのだ。

 ましてや 前提条件が甘い。 格付けが維持されていても社債を発行できるとは限らないし、自己資本比率が10%以上であればA格かといえば、 「それだけで決まるわけではない」 と格付け機関関係者は口を揃える。 原発の廃炉費用も、10兆円という見通しもあるなかで、わずか1.5兆円にすぎない。

 そしてなにより、賠償金を10兆円と仮定 しているが、バランスシート上で資産と負債に同額を計上しているため、賠償額がいくらであろうと東電自身はなにも傷まず支払うことができるという奇策が講じられている のだ。



 


 しかし、東電がこうしたスキームを使わねばならないほど追い込まれているかといえば、そうでもない。

 東電が取り組むとしているコストカットは、5兆5000億円の営業費用のうち、人件費の1割カットなどでわずか3100億円にとどまる。 少なくとも6000億円は持っているとされる不動産や株式といった資産の処分額は、3000億円にすぎず、これとは別に1000億円の海外資産も保有したままだ。

 東電だけではない。 株主責任という意味でいえば減資するのが普通だが、株主の負担は検討されていない。 それどころか、18年度からは既存株主への配当を再開 させるとしている始末だ。

 金融機関や社債権者に至っては、毎年1545億円の利息が据え置かれており、まったく傷まない銀行側は 「3月に行った超低金利での東電への緊急融資2兆円で、十分な責任を果たしている」 と反論するが、こうした状況で利息が保証されるというのも、なんとも都合のいい話ではある。

  国民だ。

 内部資料を基に電気料金を試算してみると、一般世帯の月額負担を6142円とすれば、東電管内の一般家庭の負担は25年間で約30万円上乗せされる。 全国で見ても1万0800円( 中国電力 )~3万8700円( 関西電力 )だ。

 なにも電気料金への転嫁だけではない。 賠償機構に入る資金を見れば、 その出どころはすべて税金だ。 いみじくも、 財務省幹部が 「国が支援に乗り出せば、電気料金の値上げか増税は避けられない」 と明かすように、 結局負担を強いられるのは国民だけ なのだ。

 菅政権は、こうした欺瞞に満ちた賠償スキームについて、今国会で法案を提出、可決する構えを見せていた。 だが、現時点では法案提出すらされておらず、6月22日に期末を迎える会期の延長さえ態度を決めかねている。

 さらには、身内からの思わぬ反発に怖じ気づいたとの見方もあり、永田町では、とりあえず法案提出を見送り、8月にも召集する臨時国会に審議を先送りするのではないかとの観測までも浮上する。 しかし、たとえ会期を延長し、党内をまとめ上げたとしても、今度は自民党など野党との攻防が待っており、波乱要因には事欠かない。

 ただ、法案が提出されなければ、東電が破綻の危機に瀕する。 それはすなわち、賠償主体が不在になることを意味する。 となれば、救済されるべき被害者が賠償を受けられないことになりかねないという、最悪の事態になる可能性をはらんでいる といえる。






( 2011.06.03 )




 福島第1原発からの放射能汚染で、農業や漁業に甚大な被害が生じている。 損害賠償のため、東京電力は政府に支援を要請していたが、5月13日、その枠組みが関係閣僚間で合意された。 実に驚くべき内容である。 関係者の責任を問うことなく、全てを国民の負担に求めている モラルなき東電救済策は根本的な見直しが必要だ。

 まず、基本問題を確認しておこう。 しばしば、東電の負担はどこまでで政府の負担はどれだけか、という議論がなされる。 実務上の問題として当然、線引きは必要である。 しかし、決して本質的な問題ではないとあえて主張したい。 東電負担なら電力料金を通して住民( 国民 )が負担し、国なら税金を通して国民が負担するからだ。 要するに範囲や形態の違いこそあれ、全て国民の負担になる。 問うべき本質は、いかに国民全体の負担を最小化できるか、である。

 東電賠償問題の基本は、公的な性格を負った民間企業が経営破綻のリスクに直面したとき、政府はどう対応すべきか、という点に尽きる。 最大8兆円ともいわれる賠償金額は到底、民間企業で負担できるものではない。 だが、債務超過に陥った事業者が破綻して清算されれば、二重の意味で大問題が生じる。 住民が電力供給を受けられない こと、および 被害者が賠償を受けられない こと、である。




 こう考えると、東電の問題は債務超過に陥って破綻した金融機関への公的介入と類似している。 2003年の足利銀行一時国有化を思い出せばいい。 この時、預金保険機構を通じて公的資金が活用された。 今回の賠償でも、預金保険機構と同様の機能を果たす 「機構」 が設けられ、そこに全事業者( 電力会社 )がお金を出し合い、不足分を国が負担( 交付国債を交付 )する仕組みである。 ただし銀行のスキームとは1点で異なる。 関係者の責任が一切追及されず、当事者( 株主、債権者など )の負担が求められていないことだ。

 閣僚合意の文書を読むと、こうした問題点が実に素直に記述されている。 まず、 「すべてのステークホルダーに協力を求める」 とある。 求めるのは、責任ではなく協力だ。 そして 「電力事業者を債務超過にしない」 と記されている。 しかし現実問題として、東電は債務超過になると考えられる。 だからこそ、国の支援が必要なのであり、さもなければ、そもそも国が心配する必要もない。 電力事業者の場合、こうした政策措置は現行法では定められていないので、今回、預金保険法を参考に法律の枠組みを作らねばならないのだ。

 預金保険法では、ルールは明確だ。 債務超過で株式価値がゼロ以下になったのを確認したうえで、一時国有化し、経営責任を求めて経営陣を替えて、株主も権利を失うことで責任を果たす。 国から送り込まれた新経営者( 実質管財人 )がリストラなどを徹底し、新経営主体に売却する。 足利銀行も約2年間の国有化を経て無事、別の民間経営主体に売却された。 したがって、東電はなくなるが、関東の電力会社はなくならない。 賠償は、国有化した段階で政府が全責任をもって行えばよいのだ。

 東電には約3兆円弱の自己資本がある。 賠償額が8兆円として、株主が3兆円を負担すれば、国民の負担はその分軽減される。 これが、銀行の例から分かるように普通の処理方法といえる。 しかし、菅内閣のスキームは 関係者の協力は求めても責任は求めない負担は全て国民につけ回しされる




 こんな、責任を曖昧にした案がほとんど明示的議論もないまま決まった。 東電関係者の責任を求めないのは、原子力政策に関する政府・経済産業省の責任に話が及ぶのを避けんがため、と勘ぐられても仕方あるまい。 内閣自身にある種の後ろめたさがあるからこそ、官房長官が、とってつけたように銀行の債権放棄に言及したのだろう。 もっともその場合も、法律論の常識として、債権者以前に株主責任をまず求めるべきである。

 責任を明確にせず、 「協力」 や 「お願い」 で曖昧な決着をするのは、現内閣の特徴ともいえる。 浜岡原発の操業停止も、首相が中部電力に 「お願い」 した。 節電では経済団体に 「協力」 を呼びかけ、原発周辺の避難ももとは 「自主避難」 だった。 誰も責任を負わず、なし崩し的に事態が進み、全てが政府の責任回避につながる。 東電を一時国有化すれば、情報開示も全て政府の責任になる。 現状のように、不都合を何でも東電の責任にすることもできなくなろう。

 いま必要なのは、賠償を可能にし新たな民間経営主体に引き継ぐための一時国有化である。 これは非常時の対応策として有効だ。 そして、新たな民間主体に売却する際に 「送電」 と 「発電」 を分離すればよい。 いずれも政治の意思で可能なことばかりなのである。

 






 

 政府高官が発した 「債権放棄」 のひと言が銀行業界を揺るがしている。 対象は東京電力向け融資。 債権放棄が実施された際のインパクトを試算したところ、衝撃の結果が導き出された。
 5月13日、銀行業界に衝撃が走った。 東京電力の原発事故賠償をめぐって、枝野幸男官房長官が突如、金融機関に東電向け融資の債権放棄を求める想定外の発言を口にしたのだ。

 これをきっかけに、東電に巨額の融資をしているメガバンク株は急落。 銀行業界は大混乱に陥った。

 そもそも債権放棄とは、金融機関が経営危機に瀕した取引先を再建させるため、融資の一部または全額の返済を免除すること。 金融機関としては多額の損失計上を迫られるため、メガバンクは当然、枝野発言に猛反発した。

 三菱UFJフィナンシャル・グループ( FG )の永易克典社長が 「非常に唐突で違和感を感じる」 と不快感を示せば、全国銀行協会会長の奥正之・三井住友FG会長も 「現時点で債権放棄、金利減免は念頭にない」 と切って捨てた。

 大手格付け会社ムーディーズ・ジャパンからは 「金融機関が債権放棄に応じたら格付けを引き下げ方向で見直す」 とのコメントまで飛び出した。

 対する枝野長官は自身の発言について 「( 債権放棄が賠償策に関する法案提出の )条件という思いはまったくない」 と、発言の修正こそ図っているものの、撤回する様子はなく、依然として債権放棄に強いこだわりがあるとの指摘は多い。 官邸発の“余震”はいまなお続いており、メガバンクの業績に暗い影を落としている。

 そこで実際に債権放棄が行われた場合、メガバンクに最大でどの程度の減益インパクトがあるのかシミュレーションした。


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 まずメガバンクの東電向け融資は、震災前と震災後で分けて考える必要がある。

 というのも、枝野長官が債権放棄を求めたのが、震災前の融資についてだからだ。 図①のとおり、メガバンク3行は震災前から東電に対し、6000億円を超す融資残高があった。

 さらに3行は震災後の3月末、東電の資金繰りを支援するために1兆6000億円もの緊急融資に踏み切っている。 東電の破綻を回避するため、政府からの要請を受けて行っただけに、ハシゴをはずされたとの不満が根強い。

 こうした融資に対しても金融市場では、債権放棄を逃れるための苦肉の策として、金利減免や返済期限を迎えた際の超低利による借り換え案が浮上していた。 ただ、こうした手法でも 「条件緩和債権」 として、20%相当の引き当てが求められる不良債権に分類される可能性が高い。

 これらの前提を踏まえ、メガバンクにとって最も損失が大きくなるのは、震災前の融資を全額債権放棄したうえ、震災後の融資についても、20%相当の引当金を積まされた場合と仮定した。

 ただ債権放棄は、債権カット率が100%ではなく、割り引かれるケースが多い。 そこで直近の大型案件で似たケースとして、昨年の日本航空( JAL )の債権放棄で適用された債権カット率87.5%での損失額試算も併せて行った。

 その結果、債権カット率100%の最大損失額は三井住友FGの4109億円を筆頭に、いずれも数千億円規模に上ることが判明。 そこから法人税40%を差し引いた純利益へのインパクトもそれぞれ、1600億円から2400億円に達する結果となった( 図① )。


 資本にも影響を与えている。2011年3月期の株主資本に最大損失を織り込むと、株主資本への影響は、東電のメインバンクである三井住友FGが4.8%、みずほFGが4.3%のマイナスインパクトになる( 図② )。 国際的な資本規制強化への対応を急ぐメガバンクにとっては、大きな痛手だ。

 むろん、東電向け融資の債権放棄は法的根拠に乏しく、実施されない可能性が高い。 とはいえ、大手行幹部は 「政治とここまで話がこじれると、ゼロ回答は難しい」 と指摘。 東電も5月下旬、すべての借入金について、優良企業並みの年0.5%程度で借り換えに応じるよう金融機関に要請したとされ、メガバンクは応じる構えだ。 こうした条件の緩和が不良債権に分類されないためには、今後金融当局との調整が不可欠となる。

 また、5月20日に発表された東電の決算には、 「継続企業の前提」 に関する注記が付されていた。 これにより、自動的に融資の全額に対して20%相当の引き当てが必要になるとの見方もある。




 東電の経営危機は、直接金融の柱である社債市場の混乱も招き、企業の資金調達における銀行融資の重要性を高める結果となった。


 図③を見てほしい。 銀行の貸出残高( 月中平均 )の推移を示したもので、11年4月の残高は前年同月比で1.0%減の395.6兆円となっている。 17ヵ月連続のマイナスではあるが、減少率は09年12月にマイナスに転じて以降、最も低い割合となった。 震災で銀行への資金需要が高まったためとされる。

 今後はさらに、電力債の発行が困難となった他の電力会社からの資金需要も増加することが考えられる。

 しかし、東電への緊急融資でハシゴをはずされるリスクを経験したメガバンクが、これまでどおりの基準で融資に応じるかは疑問が残る。 東電の責任追及を目論んだ政治家のひと言が、銀行の融資姿勢を頑なにし、他の電力会社、ひいてはリスクがないと思われてきた融資先をも窮地に陥れるかもしれない。







 福島第1原発事故を巡る損害賠償問題に絡み、枝野幸男官房長官が東京電力の取引銀行に債権放棄を促した発言 が波紋を呼んでいる。
 この発言に対する銀行の評判は悪く、世論の同情は薄い。 「公共性」 「社会的責任」 といった要請に囲まれて、日本の銀行経営はますます袋小路に陥っている。
 日本経済は1990年代初めのバブル崩壊以降、金融危機など数々の危機に見舞われてきた。 そこへ今回の未曽有の東日本大震災である。 政策対応は危機への対処策のまずさに合わせて、中長期的な先見性のなさも露呈している。 しかし、経済への政府の介入は確実に肥大化している。 民間は政府に救済を求めるため、政府の役割の増大はやむを得ない面もある。 だが、これが日本経済をむしばんではいないだろうか。
 その典型が金融分野である。 マーケットに生きる中央銀行の哲学は、市場への介入を極小にとどめながら政策を実現することにある。 昨年秋の 「デフレ」 対策以来の一連の 「包括的金融緩和措置」 で、日銀はそのバランスシートの規模だけでなく、守備範囲を拡大した。 マーケットの蘇生措置ではあるものの、必要以上の肥大化も生んでいる。
 仮に、日銀の行動が消極性への批判を免れるための政治的な思惑によるものなら、正常化への出口はより遠のくことになる。 金融部門全般ではその傾向は一層強い。 銀行部門の国債保有の増加ばかりではない。 中小企業向け融資の拡大を強制され、銀行の自発的な経営余地はますます狭められている。 それに輪をかけ、当局は民間のリスクデータを過度に抑制する。
 わが国の行政には、作為への罰則はあっても、不作為への罰則はない。 また民間企業側でも、損失に伴う経営責任はあっても、儲けないことへの責任はない。 不成功が問われず、失敗が問われる体質が蔓延している。 不良債権問題での判例で示されたように、経営責任が刑事罰の対象となれば、経営者は裁量を避け萎縮する。 守りの経営は、結局は革新的な有能を排斥してしまう。
 そして日本企業の大型破綻を許さない政府の救済策は、国際金融界では値下がりリスクを回避する金融派生商品( デリバティブ )になぞらえて 「日本のフット」 としてささやかれている。 破綻寸前の日本企業を持っていても、フット( 売る権利 )を行使すれば日本政府が救済してくれるからだ。 これに乗じたハゲタカ的な取引も経済合理的な行動であろうが、問題は政府が企業ではなくハゲタカを救済してしまうことだ。
 当局はこれまでこうした事実に目をつむってきたが、このままではこの国は救われない。 日本の将来のために、自発的なリスクデータができる金融の再生策が望まれる。





(2011.06.19)

……


 東京電力の資金繰りを支援するため、主力取引銀行である三井住友、みずほコーポレート、三菱東京UFJの大手3銀行が、貸出期間6ヵ月の短期資金を融資したことが18日、分かった。

 4~6月に合計1400億円を融資したほか、7月にも1000億円強の追加融資に踏み切る方針だ。 福島第一原子力発電所の事故前に貸していた資金の返済にあてるためで、事故前とほぼ同様に低金利での借り換えに応じることで東電の資金繰りを支援する。

 東電は原発事故への対応などで手元資金が減っており、主力行として協力することにした。 大手銀行は3月末から4月初めにかけて計約2兆円の長期資金を融資した。 今後返済期限を迎える長期資金についても従来の融資残高を維持する方向で支援するとみられる。





(2011.06.21)


 東京電力が50以上の取引金融機関に対して金融支援を近く要請することが20日、明らかになった。

 震災前に借りていた長期・短期の計約2兆円のうち返済期限を迎える融資の借り換えと、残高の維持を求める。 融資金利も年1%未満の超低金利を要請する模様だ。 ただ、格付け会社ムーディーズ・ジャパンは同日、東電の格付けを投機的水準に引き下げることを決めており、各金融機関は厳しい判断を迫られることになりそうだ。

 東電は、原発の停止に伴う火力発電所の燃料費の増加、原発事故対応などで資金繰りが厳しい。 東電の経営が厳しさを増す中で、政府が14日に閣議決定した東電を支援する 「原子力損害賠償支援機構法案」 は成立のめどが立っていない。 法案は、政府が東電を債務超過にしないことを盛り込んでいる一方で、賠償を円滑に進めるために金融機関に対しても協力するように求めている。






 


 福島原発の事故を受けて、ドイツは2022年までに原子力発電から完全脱却することを決めた。 いよいよ電気が足りなくなれば、隣のフランスから買えばいい、と割り切ったらしいが、それでも日本と同じ 「核兵器を保有しない原子力大国」 のドイツである。 脱原発に踏み切る決断は重い。
 核保有国は、つねに兵器としての原子力に直面している。 それだけに、政府や軍は原子力技術者を多く抱えているし、政治家も本気で 「核の恐怖」 と向き合う。 世界で最も原子力事故へのノウハウを蓄積しているのは、おそらく原子力空母や原潜を多く保有する米軍であろう。
 日本の場合、広島・長崎の経験もあって、兵器としての核には目を閉ざし、平和利用に徹しようとしてきた。 “Nuclear” という英語を 「核」 と 「原子力」 に使い分け、前者は見ないふり をしてきた。 だから北朝鮮問題では、拉致には怒るが核開発には無関心という妙な反応 を示したりした。







 核アレルギー下、原子力開発は9電力など民間企業主体で進んだ。 もちろん立地や廃棄物処理には政府の関与が必要なので、そこは 「国策民営」 という形に帰着する。 しかるに技術者の層については、 「民高政低」 であった。 今回の事故で初めて、そのことによる弊害が表面化した。
 今のところ政府は、東京電力を悪者にし、処理も賠償も押し付けて自らは後ろに回っている。 能力も覚悟もないからには、やむをえないところもある。 だが、このままの状態で、再度の原発事故が起これば、日本はアウトである。 どうしたらいいのか。
 一つは 「脱原発」 を徹底することだろう。 非核三原則に原子力発電も加え、嫌な核からとことん逃避する。 電力不足に陥っても、仕方がないとあきらめる選択 である。
 ただし、日本の近隣国では原子力開発が進むし、北朝鮮の脅威だってある。 どの道、核から逃げられないのであれば、この際、腹を決めて政府が原子力を取り込むことを考えてもいいのではないか。
 まず柏崎刈羽の原発を東電から政府が買い上げる。 東電はその資金を賠償金の原資に充てる。 と同時に、政府から買った電力を首都圏のユーザーに送配電する。
 政府は買い上げた原発を公社化し、売電による収入によって当初の出資金を回収する。 さらには、他の電力会社にも原発の売却を求める。 規模の小さな電力会社は、喜んで手放すかもしれない。 今は誰もが原発のリスクにおびえているからだ。 究極的には、原発をすべて国に移管することにより、電力会社を原子力のリスクから解放する。 「国営国策」 の体制を整えるのだ。
 もちろんその上で 「脱原発」 を目指すのも可、だ。 いずれにせよ、そうでもしないと、前に進めないのではないか。





( 2011.04.27 )
東京電力は
 



 原発事故で巨額の補償を迫られている東電は、役員報酬の最大50%減額など人件費削減で総額540億円を捻出するというが、企業年金の支給額も見直すべきだ。
 JALがOBの企業年金を3割から5割カットしたように、東電も見直しが必要でしょう。 聞くところによると、平均支給額は月40万~50万円程度というからベラボーです」 ( 経済ジャーナリスト・深川孝行氏 )
 月40万~50万円なんて厚生年金の倍以上、国民年金の5倍以上だ。 これまで原発を推進してきたくせに、今は悠々自適のOBたちが原発事故に対し“高みの見物”を決め込んでいるのである。
 東電の年金資金は約6000億円ある。 支給額を減額すれば1000億円単位のカネは捻出できる。
 役員報酬の50%減額も甘すぎる。 平均役員報酬額は3674万円。 半分カットしても1837万円で、サラリーマンの平均年収429万6000円の4倍以上だ。
 「世間を完全にナメています。 日本だけでなく世界中を震撼させた原発事故ですから、報酬ゼロが当たり前でしょう。 第一に責任を追うべき東電役員が報酬を得るとは言語道断です」 ( 深川氏 )
 さらに勝俣会長と清水社長は東電株を約2万5000株保有している。 昨年度の配当金は150万円程度だが、スゴイのはその資産価値で、昨年3月末の株価で算出すると約6230万円だ。 株価が5分の1になった今でも、1200万円の価値になる。
 だいたい役員が20人( うち2人は社外役員 )、執行役員が28人というのも多過ぎる。 日本監査協会の調査によると、上場企業の平均役員数は7.9人、執行役員は10.8人だ。
 20%カットを決めた一般社員の年収にもカラクリがある。
 有価証券報告書によると、平均年収は758万円(40.6歳)だが、これは高卒から女性まで全部ひっくるめた金額だ。 大卒はもっともらっている。 雑誌 「SPA!」 ( 10年11月2日・9日号 )には、1084万円( 34歳 )、1060万円( 37歳 )、900万円( 35歳 )といった高額所得者が登場していた。
 削減できる箇所は山のようにある。電気料金の値上げはもってのほかだ。




( 2011.06.18 )


vs.

 政府は5月13日に福島第一原子力発電所事故をめぐる賠償( 補償 )スキームを決定した。 その骨子は 「国民負担の最小化」 にあるとされる。 一見、耳ざわりがよい言い回しではあるが、少し考えるとこれほど摩訶不思議な方針( ? )はない。

 賠償額を一定とするなら、そのために必要な負担の大きさが変わることはない。 無から有を生み出すことはできない。 当たり前である。 そして賠償金を外国が負担してくれるわけはないのだから、日本国内の経済主体が負担するしかない。 結局は賠償の問題は誰が負担するかという分配の問題なのである。

 国内の誰が負担するのか。 第一義的には東京電力関係者ということになるのだろう。 同スキームにおいても、東京電力のできるかぎりのリストラ、資産売却を前提とするとしている。 これを受けて、東京電力は役員・幹部報酬の一部抑制や顧問制度の廃止、資産売却などの方針を打ち出している。

 しかし、その一方で株式上場は継続され、社債は表面上保護されるなど東電存続を前提とした方針になっており、会社更生法や国有化等の大幅な改変を伴わないため、その効果には疑問が残る。 象徴的なのは13日の予算委員会での、清水正孝東京電力社長の退職金・企業年金削減への抵抗だ。 既存の組織が、外部からの圧力なしに、自発的にリストラを継続すると考えるのには無理がある。

 現在はまだ東京電力の処理に耳目が集まっており、月額40万円といわれる同社の年金削減なしの賠償案が受け入れられるとはとても思えない。 しかし今後、世論の注目が去るにつれて、賠償のための経営改革は容易に骨抜きにされかねない。

 現在の方針では、東京電力への負担はきわめて緩やかなものになりかねない。 もともと東電とその関係者への負担だけではとても足りない必要賠償額であり、電力各社の協力を得たとしても、この事情は変わらない。 そのなかで次なる 「国民以外への負担」 として政権が注目したのが、金融機関の対東電債権の放棄・減免である。

 17日の閣議後記者会見で枝野官房長官が言及した債権放棄・減免要請は、主要閣僚にも、一部を除き基本的な支持を得ているようだ。 ここにみてとれるのが民主党の一部に残る 「大企業 vs. 国民」 という、あまりにも古い経済認識の残滓である。

 金融機関等の 「大企業の負担」 は 「国民負担」 ではない、というわけだ。 現代においてなお、このような単純な詭弁に騙される国民など、いるのだろうか? たしかに法人は国民ではない。 しかし、大企業の従業員はもちろん、その取引先、さらには従業員の日々の消費活動にまで思いを巡らせるならば、 「大企業の負担」 は非常に裾野の広い国民負担を生じさせざるをえない。 繰り返しになるが、国民負担の総額を圧縮することはできないのである。




 通常の企業破綻のプロセスでは、債権者は 「潰れるような企業に貸した」 という意味での貸し手責任を問われる。 しかし金融機関は、東電を公企業ととらえて政府の暗黙の保証を前提に貸し付けを行なっている。 これは東電への貸し付けの金利をみればわかる。 その意味で、東電への貸し付けは国債保有に近い性格をもつといってよい。

 19日会見での枝野長官は、債権放棄・減免方針に反対する金融機関、同関連団体に対する再反論という文脈で、 「( 東電は )普通の民間企業と違うのは当然だ」 と発言した。 これは反論になっていないどころか、要請に根拠がないことを自ら宣言しているようなものだ。 東電は普通の民間企業ではない。 したがって、貸し手責任ルールは適用できない。

 世論調査の支持率、政党内での発言力の低下において東日本大震災前に死に体であった菅内閣は、皮肉なことに震災の発生によって延命している。 そのなかで広く国民に負担を求める提案が困難であることはわかる。 大問題ではあるが、その構造は単純だ。 賠償は、東電に十分な責任を負わせたうえで、広く国民の負担によって行なう以外の方法はない。

 残された問題は二択だ。 電力料金の値上げか、財政負担かである。 このいずれを選択するかはマネジメント上の問題となろう。 電力料金の値上げによる調達には二つの問題が残る。 一つが産業への負担が生産拠点のさらなる海外流出を促進するという問題であり、もう一つは現行のスキームでは電気料金値上げによって生まれる電力各社の営業余剰が本当に賠償に振り分けられるのかという問題だ。 企業が利益を圧縮するのは困難なことではない。

 すると賠償問題の本丸もまた財政だということがわかる。 問題は、国債調達の際に何年で償還するのかの一点に絞られている。 財政問題を 「みたくない」 のかもしれないが、問題の根幹が 「ここにある」 以上避けて通ることはできないのだ。





( 2013.03.26 )


 昨年末、米空母ロナルド・レーガン乗組員ら9人が 「嘘の情報で被曝した」 として東京電力を訴えた。 3月14日の段階で、その原告数は115人を超えたという。

 我々日本人に対する放射性物質の影響の説明とおなじく、アメリカ人にも胸を張って、 「因果関係は認められない」 といい切れよ。

 山下俊一教授あたりを証人に立てて、 「せっかくのトモダチ作戦、ニコニコ笑っていれば放射能の被害は受けなかったはず」 などといわせてみ?

 みなさんは覚えているだろうか。 以前、福島第一原発から45キロほど離れた二本松市のゴルフ場が、東京電力に汚染の除去を求め、東京地裁に仮処分を申し立てた。 その時の東電側の主張は、 「原発から飛び散った放射性物質は、東電の所有物ではない」 というものだった。

 たしか 「無主物」 という言葉を使ったんだ。 無主物とは、ただよう霧や、海で泳ぐ魚のように、だれのものでもない、という意味だ。 そして、東京地裁ではそのとんでもない東電の言い分が認められた。

 米連邦地裁にも、その言い分が通じるかしらね。 「被曝したっていわれてもさ、事故で飛び散った放射性物質は無主物で、東電のものではないんだもん」 って。

 ま、認められるか認められないかは置いといて、とにかくおなじことをいってみろというのだ。 でないと、アメリカ人の命や健康の価値と、日本人の命や健康の価値に違いがあるみたいで、面白くない。

 トモダチ作戦で太平洋沖の船に数週間いた米兵より、福島第一原発周辺に住む人たちや福島県以外のホットスポットに住みつづけている人のほうが、どう考えても被曝してる。

 日本人には 「大丈夫」 といい、アメリカ人には賠償金を払うようなことがあったら、許せない!


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