臣( 山田正彦編 )

 「 もう日本の陶器産業は、壊滅状態ですよ 」
 と私の知人の一人は言う。
 「日本人は誰も、料理を陶器に盛りつける楽しみなんてことを知らなくなったんです。 夕飯のおかずはお惣菜売り場で買って来て、プラスチックの容器ごとテーブルの上に出して、食べたらそのまま捨てちゃうんですから。 趣味の陶器の出番なんかないんです」
 とその言葉は諦めきったようである。
 その上最近の家庭は、人をご飯に呼ばなくなった。 食事に招待してこそ、きれいなお皿や茶碗の出番がある。 どうして食事に呼ぶということをしなくなったのだろう、と私は首を傾げる人間の一人だ。
 私たちは高齢者で前の時代を知っているから、今でも同級生同士がふた月に一度くらいずつはご飯に呼び合って一皿ずつ持ち寄り、食べ終わると皆でお皿洗いをしてから解散している。 誰もが家に食器の類はもう充分に持っているのだが、まだ美しいものを見ると欲しくなる陶器病にかかっている人たちである。
 家庭に親戚を呼んだり、日本料理の料亭などを覗いたことのない世代が、人を呼ぶというのはどういうことをしたらいいのか全くわからなくなっているので、人を呼ばないのだろう、と思う。
 ごく普通の日用雑器の陶器が売れれば、多くの絵付けの職人が必要とされ、その中から名人も芸術家も出て、新しい分野の陶器産業を牽引する。
 こうした因果関係が日本の社会から消え、職人も技術者も育たなくなったことに、政治家も全く危機感を抱いていないのだ。
 社会全体が自宅に人を呼ばないような生活になると、食器の贅沢など誰もしない。 陶器の産地で商品が売れなくなると、職人や技術者にそれなりの報酬を払えなくなるから、匠も育たない。 その技術において世界の美術をリードして来た日本の陶器産業全体は、衰退し、やがて壊滅的最後を迎えることは眼に見えている。
 すべての産業には、パトロンが要る。 皆が平等でなければならない民主主義では、パトロンになるような富の偏在を許さないから、何一つ秀でた芸術と芸術家は生まれないのである。 こうして平均化は、国家と社会の貧困化にもまっしぐらに繋がる。

 陶器産業の中心地・有田からは 「どんな政治家が出ているのですか」 と私は尋ねた。
 「その人が、有田救済、再建のために奮闘努力しないんですか」
 「いや、何もしていません」
 と陶器産業の関係者は言った。
 有田地方から出ている代議士は現在、農水省の大臣である山田正彦氏 だという。 この人のことを内館牧子さんが8月20日号の 『 週刊朝日 』 で書いている。 宮崎県の口蹄疫事件の時、何とかして種牛を残してほしいという県民の署名を束国原知事が持って行った時、立ち上がって受け取りもせず 「そこに置いといて」 と応えた不遜な人物 ときめつけている。 この光景はテレビのニュースで何度も何度も放映されたので、間違いない資料だと内館さんは用意周到だ。

 つまり威張る大臣なのである。 一旦大臣になれば、県民は見下して当然の立場になる。 もっとも私の体験によれば、これは、もしかするとこの大臣だけの問題ではない。 農水省という役所が、なぜか霞が関の中央官庁の中で、一切理由なく特別に威張っている官庁なのである。 私は十年近くその近くに位置する民間の財団で働いた。 そしてその間に何回か、全く同じような公的な理由で、文科省、厚生労働省、国交省、防衛省などにごく短時間 「 ご挨拶 」 に廻った。
 「この度は、お忙しい中から、若い職員の方にご参加をいただきまして……」 と私か当日会ってくださる責任者( 地位は各省まちまち )に同じように言うと、先方も「いや、こちらこそいろいろとお世話になりまして……」 とそこは、そういう程度に穏やかにあいまいに譲り合うような日本的なやりとりがあったものだ。
 しかし農水省だけは、桁外れに威張っていた。 「あ、ごくろうさん」 と顎でしゃくう感じで、“埓外らちがい” の人間の考えや行動には興味もないのである。 農水行政というのは、よほど農民と漁民に威張ることのできるポストで、その愚かな毒が全省にしみついていると推測したものだ。

 こんなことを考えていたら、8月も半ばに近づいて、靖国問題がクローズアップされた。
 与党の閣僚は、近隣の思惑を恐れて一斉にお参りしないと言う。 一人一人にその理由を挙げさせた毎日新聞の記事はおもしろかった。
 菅総理は、A級戦犯が合祀されているから行かないのだという。 A級戦犯だけが戦争をしたのか。 昔の一般国民も新聞社もNHKも、悲痛な思いで充分に戦争に加担した。
 原口総務相は 「閣僚として内閣方針に従う。 個人としては意見がある」 のだそうだ。 大臣になるためには、自分の良心や哲学を曲げる人は今までに散々見たが、またここにも一人という感じだ。
 岡田外相は 「A級戦犯が合祀された靖国神社に閣僚が参拝するのは不適切」 と外相として最も適性を欠く返答をしている。 この返答の中には、外交とはいかなるものかという姿勢の強さもなく、人が人を決定的に裁くことにたいする哲学的な畏れもない。
 しかし圧巻は山田農相だった。
 「今まで行ったことがない。 私はカトリック信者」
 大臣を務めるのなら、農相には二つの義務がある。 カトリックだと公言するなら聖書の勉強をすることだ。 聖書は異教徒を決して無視してはならないことを数ヵ所で命じている。 私はカトリックの学校に育ったが、子供の頃から実に平易な言葉でそれを習った。 「もしあなたたちがお嫁に行って、その先が仏教徒だったら、お姑さんが大切にしているお仏壇を、真っ先にお掃除するお嫁さんになりなさい」 と外国人の修道女が教えたのだ。
 また山田氏は単なる一市民ではなく少なくとも政治に携わる人なら、カトリックの信仰と組織を統括するヴァチカンが、公的に靖国参拝を否定しなかったという歴史を確認しておいたほうがいいと思う。 この手の 「カトリックだから参拝しない」 などと言う、それが信仰の証のようなことを代表して言われると、周囲に迷惑が及ぶこともあろう。


東国原英夫 宮崎県知事
「口蹄疫との わが120日戦争」

嘆願書を 「そこに置いて」

 県内唯一の民間種雄牛を飼育していた、三共種畜牧場( 高鍋町 )の薦田長久さんが種雄牛6頭の殺処分を拒否した際、山田大臣からは特措法による勧告を厳しく要求され、「 一応、勧告だけはします 」 とお答えしました。
 しかし、国の責任でやると言っておきながら、地元や農家さんたちへの説得・同意等は地元首長たちに押しつける。 その国の姿勢にも到底納得がいきませんでした。
 県から勧告を出した際、薦田さんは「 私の人生をかけた種雄牛がもし殺処分されたら、私も死ぬ 」 と仰った。 その姿勢は本気であると判断しました。 県民の生活を預かる立場として、行政執行によりみすみす薦田さん( 県民 )の命を奪つようなことがあってはならない。
 ついには薦田さんから「 県に無償譲渡するので、畜産界の大事な遺伝子・資産を、畜産復興のため残し、役立てて欲しい 」 との申し出があり、県の所有になるのなら、5月10日前後に国が特例を認めた県スーパー種雄牛と同じ条件で救済できないだろうかと考え、それを山田大臣に伝えました。 篠原副大臣( 現・現地対策本部長 )によると、山田大臣の答えは 「赤松大臣は認めたかもしれないが、今は私が大臣だ。 私は認めない」 でした。
 ちなみに、赤松大臣のときの副大臣は山田大臣です。 県のスーパー種雄牛の避難を特例で認めたのは、赤松大臣と山田副大臣です。 明らかに論理破綻・論理矛盾しています もちろん、家伝法と特措法の違いはあれ、家伝法を補足・補完するのが特措法であり、特例が示す質・趣旨は同じです。
 その後、私のほうから 「どこにでも会いに行きますから、話を聞いていただきたい」 と山田大臣に面談を申し入れたのですが、 「事務方になら会ってもいい」 と言われ、仕方なく事務方が参議院選挙中に熊本空港まで会いに行き、6頭の救済を申し入れましたが、けんもほろろに断られました。
 ところが、選挙が終わると突然、山田大臣から 「会ってもいいので農水省に来てくれ」 と言われたので、わざわざ農水省まで出向きました。
 そこで、県内から集められた種雄牛の助命嘆願書を手渡そうとすると、椅子にふんぞり返ったまま 「そこに置いて」 と言われました
 私は知事職をやってまだ4年弱ですが、嘆願書を 「そこに置いて」 と言われたのは初めてです。 よほど投げ付けてやろうかと思いましたが、県民の皆様の民意を投げ付けたら失礼だと思い、ぐっと堪えました。
 嘆願書はたとえ反対であろうが賛成であろうが、民意ですから受け取るのが常識です。 これまで様々な大臣や副大臣等に要望書や嘆願書を持参しましたが、受け取らないことなどありえません。 そんな方を信用、信頼しろというほうが無理です。
 私は、山田大臣がなぜあれほどまでに種雄牛の殺処分に固執されたのか、いまだに理解できません。
( Will 2010年11月号 )


 先ほどTBSのニュースを見てびっくり。
 礼を尽くして嘆願書を差し出すそのまんま東知事に、山田農水相が言った言葉が、
 「そこに置いておいて」
 この言葉、「トラスト・ミー」と今年の 流行語大賞 を争うだろう。

 いかにむげな嘆願であってもあの態度はなんなのか。
 あれが、千葉法務大臣を続投させようとした民主党の本質なのだろう。
 嘆願書は、民意だ。
 それを 「そこに置いておいて」 と言い放ったあの態度。
 絶対忘れてはいけない

 そもそも、自分が大臣になれたのは、口蹄疫をほったらかした赤松のおかげ だろうが。
 「国家的危機」 を招いたのは、ほかならぬ自分達政府だということを忘れか。
 あの嘆願は更なる蔓延を招く危険があるというのは確かだが、あの態度は、宮崎県民に、はなはだ失礼だろう。
 いや、口蹄疫禍に胸を痛める人々にも。
 あんな人間が日本の農林水産業のトップだとは。
 どうせなら選挙前日に見たかった映像である。













( 2011.11.03 )

  


 民主党の山田正彦前農相は3日のBS朝日の番組で、環太平洋経済連携協定( TPP )交渉参加の是非をめぐり、 「我々の中には 離党を覚悟 している人もいる。 私自身も覚悟 している」 と述べ、野田首相が交渉参加に踏み切った場合は、TPP慎重派による集団離党も検討する考えを示した。

 山田氏は民主党議員が中心の議員連盟 「 TPPを慎重に考える会 」 の会長。 議連には選挙地盤の弱い若手が多く、 「民主党に残っても先はない」 と山田氏に同調する声もある。 ただ、山田氏も所属する小沢一郎元代表グループは静観の構えで、 「 勝負はTPP参加批准の時だ 」 ( 中堅 )と自重を求める声もある。





( 2011.11.10 )

  


 「もう一度、みんなと協議するが、首相が( TPPへの )参加を表明したら、重大なことになる」
 山田正彦前農相は9日午前、国会内で緊急の記者会見を開き、首相がTPPの交渉参加を表明した場合、離党も辞さない構えを強調した。
 慎重派の議員はこれまでも 「 離党カード 」 をちらつかせ、首相に交渉参加を思いとどまらせる戦術をとってきた。
 山田氏が率いる議員連盟 「 TPPを慎重に考える会 」 には、衆院比例単独議員や選挙地盤の弱い若手議員も多い。 「 このまま民主党に残っても先はない。 いっそのこと、TPPや消費増税に反対する新党をつくった方が、次期衆院選で当選する可能性が高くなるのではないか 」 ( 民主党1回生 )と、選挙最優先の姿勢をあらわにする議員もいる。






  

   ……



 山田と言えば ……
 一昨年、宮崎を中心に家畜伝染病、口蹄疫の感染が広がった時、農水相として随分と酷い対応をしていたことを、ご記憶の方も多いことでしょう。
 口蹄疫の感染が拡大する中、大臣就任のパーティーを開いたり、感染しているかはっきりしない種牛を殺処分しろと言ってみたり、その上、畜産業での中国との深い繋がりや、パチンコ業界ともズブズブの黒い噂の耐えない政治家です。
 その山田が 野田の売国政策と言われるTPPには何故、必死になって反対するのか?
 山田は畜産やってるから、TPPが導入されたらリアルで首つらなきゃならなくなる可能性あるからそりゃ必死になる訳です。
 ようは、TPPが日本破滅に繋がる危険なものだから、国と国民のことを思い反対しているのではなく、自分に降りかかる火の粉を払うのに必死 なだけなのです。
 本当に、日本のことを考えての上の行動なら、“TPPに参加したら離党”ではなく、“参加するのなら離党”であり、現段階でもっと具体的な話になっていなければ、阻止する効力はないでしょう。
 ようは、反対派が多数いることを手玉に取った恫喝、“自分の商売を脅かすような真似をするなら、党を分裂させるよ”という脅し にしか見えません。というより山田のこれまでの言動から、人格的にそう受け止めるのが、一番自然に思えます。
 本当に、国を思い離党を覚悟しているのなら、今すぐにでも実行に移すべきでしょう。
 そうでなければ、民主党の得意技、ヤルヤル詐欺 だと言われても仕方ないと思います。
 口では色々言うが、 ビジョンも覚悟もないパフォーマンス糞野郎ばかり の反対派は4次補正予算で農業予算などを分捕り、矛を収めるでしょう。