今年8月、内閣官房( 安全保障担当 )は、昨年施行された 「地理空間情報活用推進基本法」 に基づき、各省庁が持つ地理情報とその管理について実情調査を行なった。 地理空間情報とは地上はもとより、人工衛星や航空機による撮影写真やそれに基づいて作られる情報を指し、同法第3条9項は、 「個人の権利利益、国の安全等が害されることのないように配慮されなければならない」 と定めている。 しかし、その重大情報が中国企業に流出しているのである。



 昨年、グーグルの地図検索サービスがアルカイダのテロに利用されている可能性がある、と英米で問題になった。 彼らが利用していたとされるのは人工衛星画像で、個別の建物はもとより、車の大きさ程度は判別できる。 アルカイダはそれを使って英国の核施設やイラク基地の画像情報を収集していたという。
 そうした時勢のなかで、先の地理情報に関する基本法が施行されたわけだが、 「対応が遅すぎた」 と言うのは、中堅測量会社幹部だ。
 「すでに大手を含む航空測量会社から、それこそ日本全国の詳細な地理空間情報が中国に流出しています。 それもひどくなる一方で、特定地域の地形や建物の構造、土地や建物の所有者まで知られている可能性が高い」
 航空機による測量写真は、正確な地図作成のほか、道路や鉄道、ダム建設や都市計画、防災計画などの資料を作成する基本素材となる。 ナマ写真の精度は、市販される地図やネット上の地図などより格段に高いことはもちろん、コンピュータ処理により3D画像を作成することも可能で、まるで現場にいるかのようなリアルな情報も得られる。
 「衛星写真の精度も向上していますが、航空写真には遠く及ばない。 航空測量会社のそれは4m四方まで識別でき、画像処理すれば人の顔も識別できます」 ( 測量会社技術者 )
 テロリストがよだれを垂らしそうな、そんな画像を持つのが航空測量会社である。 多くの自治体では、固定資産税の課税台帳を作成するため、どこにどんな建物が新築あるいは増改築されているかを把握する目的で、毎年元日になると、測量会社に空撮を依頼する。 測量会社は精密な航空写真を撮影するとともに、自治体から提供された土地や建物に関する諸データを盛り込んで台帳を作成し、それを製品として納入している。
 つまり、全国津々浦々の詳細な空撮画像と所有者、建物の構造などを合わせた 「完璧な不動産情報」 がそれらの会社の手元にあるわけだ。
 そんなデータが中国に流出するとはどういうことか。
 今年7月、 「国際写真測量及びリモートセンシング学会」 という4年に一度、世界各国持ち回りで行なわれる催しがオリンピックを間近に控えた北京で聞かれた。 日本からも大手、中堅の測量会社が多数参加し、本大会とは別に企業訪問が組まれ、中国企業の視察を行なわれた。
 その中に中国を代表する測量大手E社があった。 北京に本社を置く同社は、01年4月に東京・新宿区に日本法人を設立。 03年5月には測量法に基づく登録業者になっている。 資本金は2000万円。 役員構成は北京本社社長を含む3名が中国人で、これは設立から現在まで変更がない。 これに日本人1~2名が加わっており、日本人役員は入れ替わっている。
 E社は業界注視の的だ。
 「同社は日本の測量会社の下請けで急成長しています。 測量会社が業務の一部を他社に委託( 下請け )するのは業界では当たり前です。 中国企業ならコストは国内委託の3分の1で済む。 国内大手の一部は、かなり積極的に中国委託を進めており、その代表格がE社です。 委託のためには写真や各種データを渡すことはもちろん、画像処理などの技術指導も必要になる。 結果的にE社は膨大な日本の地理情報を握っている可能性が高い」 ( 大手測量会社OB )



 人件費の安い中国が 「世界の工場」 としてビジネスの世界で活躍するのは当然だ。 日本企業もあらゆる業種で中国への業務委託や生産発注が進んでいる。 しかし、扱う“商品”が個人情報を含む 「日本の国家データベース」 とも言うべき地理情報であれば、当然、委託の在り方も問われることになる。
 しかも、E社のS社長の経歴を問題視する声が業界内部にあることは見逃せない。
 S社長は現在、40代後半とされ、業界内部では 「父親は軍人で母親が日系企業の役員。 北京の有名大学卒」 というエリートを絵に描いたような経歴で知られている。 日本でコンピュータシステムを学んだ経験があり、北京の国防大学内にコンピュータ専門学校を設立している。 注目すべきは 「軍」 と 「日本」 に浅からぬ人脈を持つ点だろう。
 S氏は再来日して地図に関する技術を取得し、中国と日本で測量会社を発足させたという。 そして、日本の大手測量会社との関係を足がかりに、10年足らずで中国の業界トップ企業に成長したのだという。
 「E社は日本の業界事情を熟知していた。 公共事業の減少で国内の競争が激しくなり、測量会社は利益の出ない価格でも無理して受注するようになった。 その分、コストをぎりぎりまで削減するために中国への委託に頼らざるを得ない。 E社はそこで急成長した」 ( 前出・中堅測量会社幹部 )
 日本の業界は、 「大手4社」 と呼ばれる企業を中心に、全国に中小の測量会社がある。 従来は大手が中小に業務委託し、業界全体がピラミッドを形成して成り立っていた。 しかし、生き残りのために大手の中から入札価格を“ダンピング”するところが現われ、業界の慣習が崩れた。
 大手の 「中国詣で」 によって窮地に立つ別の中堅会社首脳の恨み節だ。
 「発注元の自治体が決める入札予定価格の約70%が採算ラインとすると、大手の一角であるA社は平均50%で落札している。 ときには30~40%という例もある。 これでは他社は対抗できません。 そうやっておいて、受注した仕事は中国に丸投げする。 国内業界は疲弊してライバルはどんどん潰れていきますよ」
 A社の突出ぶりは他の大手も刺激したという。
 「実は数年前、A社の独走は業界全体の不利益になると話し合い、他の大手も損を承知で、入札で対抗しようとした。 しかし、結局は赤字に耐えられず長続きしませんでした」 ( 大手の営業担当者 )
 A社は当時から 「やれるものならやれば」 と余裕綽々だったというが、その自信の裏づけとなったのが、中国への委託だったわけである。 もっとも、A社の中国における受け皿となっているのは、同社が中国企業との合弁で北京に設立したM社だ。 表向きは、ライバル他社が言う 「丸投げ状態」 ではなく、自身で設立した“準日本企業”で業務を行なっている形だ。
 が、A社はM社との関係を、 「出資していますが、連結子会社ではありません。 業務の一部を委託する関係で、それも売上高の1~2%程度です」 ( 広報担当 )
 と説明し、なぜか“それほど深い関係ではない”と言いたげだった。
 が、実態はそんな希薄な関係ではなさそうなのだ。
 「『 中国語ができないと仕事にならない』 と、かなりの社員が交代で中国へ語学研修に行っていますし、中国担当役員は日本にほとんどいないようです」 ( A社の取引業者 )
 A社社員の1人によれば 「一時、M社の仕事は品質が悪い、と社内で問題になった。 それほど重用するような会社なのかは疑問」 という。 それでもM社を使い続けたのは、コストを最優先した結果なのだろう。
 中国企業であっても、日本企業が主導権を握る合弁会社の場合、どの業界でも技術や品質の面では信頼性が高いものだ。 その点ではM社はむしろ“純中国企業”の特徴を示している。 気になるのはそのバックグラウンドである。



 イニシャルではわかりにくいが、実は先に触れた 「E社」 と 「M社」 はよく似た社名である。 日本の大手A社がM社に出資している関係はすでに述べたが、A社は中国で急成長したE社とも浅からぬ縁がある。 同社の日本法人設立時の役員の1人は、A社の元海外部長なのである。
 A社は 「元社員といっても退社した人間だ。 E社とは資本関係も取引もありません」 ( 広報担当 )と、E社との繋がりを否定する。
 しかし、先の大手営業担当者によれば 「M社の業務をE社がやっているのは業界周知のこと。 M社はいわばE社の代理店だ。 A社がなぜそれを隠すのか、むしろ不思議なくらいだ」 という。
 E社日本法人は、登録業者としての資格が今年5月に切れたまま更新していない。 7月の北京本社の招待には、日本の会社も5~6社参加したといわれるが、今後は本社が直接受注に動くつもりかもしれない。 ただし、軍や政府上層部との関係も噂されるE社だけに、そうなれば日本国内からも異論や不安が噴出する可能性は否定できない。 M社を通じた“迂回受注”があったとすれば、そうした批判をかわしつつ、日本で実績を積んできた可能性もある。 E社日本法人に問い合わせると、 「担当役員が海外出張中」 とのことで取材はできなかった。
  前出の中堅会社首脳は、地理情報を無警戒に国際競争にさらすことに疑問を呈する。
  「日本で撮影したナマ写真や様々な付随するデータは、もし外国の軍隊などに流れれば重要な意味を持つ。 例えば、ダムや橋脚の設計資料も航空測量会社の手でつくられるので、それが流出すれば、どこに何をどう仕掛ければ破壊できるかも簡単に割り出せる。 そんな国家の重大情報を、カネを払って外国に渡すなんてバカな話はありません。 国や行政は、外国への丸投げ委託を規制すべきです」
 しかし、国交省・国土地理院も内閣官房も 「業界の実態を把握しきれていない」 と、何とも心細い回答。
 「地図は国家なり」 という言葉もある。 日本は早急に、そうした情報の管理体制を整備すべき だろう。








 新潟市中心部の5000坪の土地を、中国政府に売るべきか否か。
 新潟市長の篠田昭氏は、11月18日、土地売却案の凍結を発表したが、余震はおさまらない。 「凍結」 は時機がくれば解除され得るのに加えて、中国側の土地取得にかける意気込みの強さが窺える からである。
 問題の土地は新潟駅からわずか500メートル、市の中心部に位置する万代小学校の跡地である。 ここに中国側が総領事館の建設を予定し、篠田市長らも歓迎した。 新潟市は住民への十分な説明を行わないまま、中国への土地売却を前提に測量を開始したが、住民の反発で中止に追い込まれた。  中国の日本専門家として重きをなす人物に元外相で前国務委員の唐家黎氏がいる。 唐氏は、小泉純一郎氏が首相だった2001年7月24日、田中真紀子外相 と会談し、小泉首相の靖国神社参拝に関して 「( 参拝を )止めなさいとゲンメイ( 厳命 )した」 ことを自ら明らかにした人物 だ。
 氏は現在、新日中友好21世紀委員会の中国側座長を務める。 日本側座長は東京証券取引所グループ前取締役会長で東芝相談役の西室泰三氏である。 日本側委員には、チャイナスクールの筆頭の一人、阿南惟茂元中国大使らに加え、キャスターの国谷裕子氏らが名を連ねている。
 唐氏ら同委員会一行は10月29日から11月2日まで5日間にわたって新潟を訪れ、精力的に各地を視察した。 氏は11月2日11時11分発の新幹線で東京に戻り、同日夕方5時、官邸に菅直人首相を表敬訪問した。 翌3日の祭日を挟んで4日昼前、氏は仙谷由人官房長官を訪ね、30分間の会談、午後には経団連を訪れた。 それにしても今回の氏の日程から、新潟が大きな比率を占めているのが見てとれる。




 氏は一連の会談や講演で 「尖閣諸島問題は主権の問題であり、すぐに状況を変えるような行動は起こしてはならない」 としたうえで、 「日中関係はこれまでどおり発展させていくべきだ」 と語っている。 「発展」 の中には、中国側が思い描いた 新潟市中心部の土地の購入 も、同じく 市中心部における中華街建設構想 も含まれていたことだろう。
 中国は5年前に北朝鮮の保有する日本海側の最北の港、羅津を租借し、初めて日本海への直接の出入口を得た。 中国にとって、羅津港を出たすぐ先に位置する新潟は地政学上、非常に重要な拠点になる。 新潟の海には次世代のエネルギー源のひとつと見られる膨大な量の メタンハイドレート が眠り、山々には大量に降り積もる雪が最高級の酒を生み出す 豊かで美味なる水 となって眠っている。 地政学的にも、資源という点でも、新潟が中国にとって非常に魅力的な県 であるのが容易に見てとれる。
 無論、どの国、どの地域にとっても、対中交流は経済を潤す効果がある。 だからこそ、新潟は県をあげて、中国との交流を深めるべく努力してきた。 自民党の新潟市議、橋田憲司氏が語った。
 「私が市議会議長だったとき、総領事館誘致を中国に陳情したことがあります。 県ぐるみで、田中真紀子、直紀両議員も働きかけました。 中国との交流が地元経済の活性化につながると期待してのことです」
 同じく自民党の佐藤幸雄市議も語った。
 「いま問題になっている万代小学校の跡地については、むしろ日本側、市長側から働きかけたと思いますよ。 議会に対しても、幾度かの食事会や会合で根回しも進んでいて、売却の話はついていたと思います」
 新潟に拠点を築く中国側の戦略的必要性は極めて大きいはずだが、現象的には日本側の働きかけが前面に出てくる。 橋田氏は、今回は市の所有地だから売却に疑問が呈されるが、民有地ならば問題はないのではないかと語る。
 民間の商行為を止めることは、法律的には勿論出来ない。 経済活動はあらゆる制約を超えてグローバルに広がっていく。 中国マネーが、日本のみならず諸国の鉱山や土地、山林や耕地を買収していく事例が目立つのはそのせいだ。 事実、わが国の法整備が追いつかないために日本の山林も制限なしに中国資本に買われつつある。
 疑問を抱かざるを得ないのは、中国政府が自国の土地を1ミリたりとも売らない一方で、他国の土地を買い急ぐ点である。 一般論として、無闇に外国に国土を売ってよいわけはないが、とりわけ、自国の土地は全く外国に売らない中国に対しては慎重になるべきであろう。 保守系の新潟クラブの市議、佐々木薫氏が語る。
 「新潟が長年かけて総領事館を誘致したことは一定の評価が出来ます。 けれど、市中心部の5000坪を売り渡せば、そこには 日本人はもはや容易に立ち入ることが出来なくなります。 大使館の土地はその国の領土と同じです。 市中心部の広大な空間がそれでいいのか、我々は慎重に考えなければならないと思います」




 大使館や領事館の開設は相互主義でなされる。 日本が中国に開設しているのと同じ数の総領事館の開設が中国にも許される。 このように数の上では平等が保たれているが、内容は必ずしもそうではない。
 たとえば、日本は北京の大使館以下、上海、広州、瀋陽、重慶、青島、香港の6ヵ所に総領事館を開設しているが、どれひとつとして、土地を購入して建てたものはない。 理由は前述した。 中国政府は決して自国の土地を売らないからである。
 他方、中国は日本では、今回の新潟のように土地を購入しようとする。 日本は他国ともこのような不平等関係にあるのか。 外務省に問い合わせると、「個別の案件」 については答えられない という。
 だが、少なくともひとつ明らかなのは、中国にある日本の公館は全て、賃貸だということだ。 一方、過去に、国会で、東京の米国大使館の賃貸料についての議論があったことから、これは少なくとも米国所有ではないことが推測出来る。 沖縄にある米国の総領事館も公邸も、民間所有の土地や建物の賃貸である。
 それにしても、中国に万代小学校跡地を売却しようという新潟市の考えはどういう理屈で正当化されるのか。 住民への説明で、新潟市側はこう繰り返している。
 「中国は他のところでも自前の土地に公館を建てている。 それが中国の慣例だ」
 自国の土地は売らずに死守する中国は、外国においては自前の土地を入手する。 この一方通行が中国の 「慣例」 である。 そんな中国の言い分だけをきいて、それに従うという新潟市の理屈は、県益も国益もないただの従属 である。 それではとても県民市民は納得しないだろう。






  


 都市の一等地を中国政府に売る計画は、新潟市だけではなく、名古屋市でも進行中だった。 しかも、売り手は財務省、日本国政府である。
 売却予定地は、名古屋城近くの南向きの3万1000平方メートルとその飛び地の2800平方メートル、合計1万200坪を超える、都市に残された最後の超大型物件だ。 国家公務員宿舎 「名城住宅」 と名城会館の跡地売却で、取得希望者の申請を4月15日から7月14日まで受けつけた。 愛知学院大などを経営する学校法人愛知学院と名古屋中国総領事館が希望し、中国政府は南側の約1万平方メートルを希望する旨、財務局に伝えた。
 そもそも、この土地を、なぜ、いま売るのか。 財務省東海財務局の国有財産調整官は語る。
 「公務員宿舎の移転再配置計画に基づき、古い資産は売却し新しい資産に置きかえていきます。 名城住宅の入居者は平成21( 2009 )年4月に退去し、新しい公務員住宅、城北住宅に入居済みです」
 つまり、公務員住宅を次々に建て替えるための売却かと問うと、 「そうです」 と、調整官は答えた。
 売却基準は買い手に公共的ニーズがあるか、申請が妥当かの2点だそうだ。 公共的ニーズとは社会福祉法人や学校、大学などがその範暗に入り、中国総領事館はウィーン条約の相互主義に基づき接受国、つまり受け入れ国は相手国の要望実現に協力することになっているため、これも範躊に入るとの見方だった。
 しかし、相互主義といいながら、日本の在中国公館は全て賃貸である。 他方中国公館は現在交渉中の名古屋と新潟を除いてすべて土地も建物も中国が取得している。




 東京港区元麻布の中国大使館は、約3900坪もある。 教育部と商務部と、各々の宿舎は730坪の土地をはじめ都内4ヵ所もすべて中国の所有だ。 札幌、大阪、福岡、長崎の総領事館も同様だ。 大阪の場合は比較的小振りの3ヵ所の土地にまたがっているが、その他の土地はいずれも1000坪から1500坪に上る。 現在、中国が画策中の新潟市と名古屋市での土地買収が実現すれば、これまでに取得した各総領事館の不動産より更に広大な5000坪級の土地を中国は手に入れることになる。
 こんなに不公平でも売るのかと問うと、調整官はこう答えた。 「現在、中国側は貸しビルで業務をしています。 自分の土地をもちたいという要望は理解出来ます」。
 一等地の宿舎に安価な家賃で住み、新宿舎を近くに作り、その経費回収を急ぎたい官僚らは、眼前のおカネの流れの収支を合わせるのに精一杯で、国土の外国政府への売却が国益に適うのかと考えることもない
 名古屋市長の河村たかし氏が語る。
 「国有地払い下げの権限は国にあるんです。 土地利用計画の決定権は地方自治体にありますが、国がどうしても売るといったら、最後まで反対出来んでしよう。 尖閣の領海侵犯事件の後で、市の一等地を中国に渡すなど市民県民は許しませんよ。 慎重のうえにも慎重にしてほしいと、民主党に申し入れ、凍結してもらいました」
 9月21日まで財務大臣政務官として同伴を担当した愛知選出の古本伸一郎衆議院議員は語る。
 「河村市長とは随分、話し合い、彼が売却を快く思っていないことは知っています。 そこで私は中国側に、市の都市計画課や議会、地域の区長ら関係者に説明し、了解を取りつけるよう注文をつけました。 その件はクリアしたと、報告を受けました」
 しかし、市中心部の国有財産を外国政府に売却することは地方の都市計画課が決めることではないだろう。 古本氏も語る。
 「確かに一出先機関が決めることではありません。 従って経緯は大臣に報告し、了解を得ています」
 なんと、野田佳彦財務大臣も了承済みだというのだ。 但し、古本氏は同伴の最終決定前に、内閣改造で政務官を離れ、後任の吉田泉氏に引き継いだ。 その間に中国が尖閣の領海侵犯事件を起こし、蛮行の限りを尽したことで、河村氏は、民主党に、土地売却の凍結を申し入れた。 新財務大臣政務官の吉田氏が説明した。
 「9月21日に政務官に就任し、古本氏から受けた引き継ぎで、私は土地売却は凍結すべきだと理解しました。 6月に、日本側から中国側に、売却出来るのは南向きの3万1000平方メートルの区画の北側と飛び地だと伝えています。 中国側はこの案に乗って来ず、8月に、3万1000平方メートルの区画の北側だけでなく南側も買いたいと言ってきました。 以来、彼らとのやりとりはないのです。 9月27日の政務三役会議で同件を野田大臣に報告し、当面見合わせることにしました。 現在、この件は、事実上、外務省の判断待ちです」
 外務省では副大臣の伴野豊氏が担当だ。 氏に問うと、生憎、取材に応じる時間がいまはとれず、翌週に回答するとのことだった。




 一体、名古屋の土地の中国への売却話はどうなるのか。 現時点の状況を直接の担当者、前出の国有財産調整官に問うた。
 「凍結はされていません。 審査中です。 結論はいつかはわかりませんが、早いに越したことはありません」
 新宿舎建設の資金回収のため、相手構わず早期に国有地を売ることを望んでいる ともとれる回答だ。 一方、政治主導を掲げる民主党は、一部の政治家が中国への土地売却の深刻な負の影響を懸念しながらも、売却中止を決断できずにいる。
 超党派の領土議連事務局長を務める衆議院議員、松原仁氏が憤る。
 「国有地売却については、二つの理由から慎重にならざるを得ません。 第一は、中国は経済大国で先進国入りしたともいえますが、他方、あの国には 言論の自由もない国際的規範も守らない我々とは全く異なる価値観を持つ国 に土地を売るのは極めて慎重であるべき です。
 第二の理由として、国有財産売却の是非を問うべきです。 売るにしても、景気低迷の中での安価な時価で売ることは許されません」

 水源と森林を守るための2本の法案を、国会会期末に上程した自民党参議院議員の山谷えり子氏も指摘した。
 「こうした大事な法案の審議を全く行わず、菅さんは早々と国会を閉じました。 菅政権に水資源や森林法どころか、都市部の土地売却について何らかの指針を打ち出す気があるのか、全く見えてきません」
 菅直人首相は、10月15日、参院予算委員会で、外国による土地取得の規制について 「是非勉強して考え方をまとめてみたい」 と述べた。 だが、その法案の審議さえせず、国会を閉じ、いま、選りに選って、社民党と組み、数合わせに走る。 政策も戦略もない。 あるのは首相を続けたい私益の心だけだ。




( 2011.05.07 )



 不動産バプルに沸く中国が日本の不動産を買い漁つていることはよく知られているが、先ごろ、東京・南麻布の超一等地が、中国大使館によって落札された。 中国に売つたのは、きわめて公的な性格の強い団体だった。
 大型連休直前の4月26日、都内千代田区にある国家公務員共済組合連合会( 以下、KKR )で超一等地の一般競争入札が行われた。 入札対象となったのはKKR所有の港区南麻布4丁目に位置する約1700坪の土地だ。
 今回の入札には、大手デベロッパーを中心に8組が参加していたが、その結果が発表されると会場がどよめいた。 ある不動産関係者がいう。
 「その瞬間、参加者から 『オー』 と声が上がったんです」
 他社がおどろくほどの入札額で、その土地を手に入れたのは、中国大使館だった。 その額はなんと60億円。 なぜ彼らはこの土地にこれほどまでにこだわったのか。
 件の土地は、地下鉄日比谷線広尾駅から徒歩7分、有栖川宮記念公園のすぐそばにある。 現在は更地の状態で、高い鉄柵の向こう側に雑草が繁り、その隣には中国大使館の分館が建っている。 この地は長年、郵政宿舎として郵政省に貸し出されていたが、郵政民営化に伴って役割を失い、賃貸契約を解除。 ここ1年は空き地となっていた。 中国大使館は数年前より外務省に買収の打診を行っており、今回のタイミングを、虎視耽々と狙っていたということになる。




 では、中国が相場を超える額を出してまで日本の土地をほしがるのはなぜか。 外務省に問い合わせたところ、報道課より以下のような返答があった。
 「在京中国大使館からは、大使公邸及び館員宿舎用の建設地として、取得を希望しているものと説明を受けています」
 手狭になった宿舎拡大のために、中国大使館が入札した60億円という額は、どれはどの高値なのだろうか。 現在の地価公示価格に照らし合わせ、南麻布4丁目の地価相場を一坪約340万円とすると、この土地の価格は、単純計算で約58億円となる。 これだけみると中国大使館はほぼ妥当な金額を支払ったことになるが、
 「あの土地に60億円も出す日本企業は存在しないだろう」
 と前出の不動産関係者は語る。 理由はその特殊な立地条件にあるという。 不動産関係者が続ける。
 「あの土地は公道との接道が狭く容積率も160%と、広さの割に建物として使用できる面積や高さも大きく制限されます。 そうなると実勢地価は一坪200万円で、総額34億~38億円かせいぜいでしょう」
 是が非でもこの土地を確保したい中国大使館と、より高値で売却したいKKRの思惑が一致した結果だが、一方で一部には、あっさり中国に土地を売り渡したKKRに対する批判も出ている。
 都の元幹部が語る。
 「あれほど広大な土地なら、国内の民間企業に売っていれば、都市計画税も含めてかなりの税収になったはずです。 それが中国に限らず外国公館の所有になれば、年間1500万円の固定資産税も入らない」
 そもそもKKRとは、国家公務員の年金をはじめとする社会保険事業のために運営されている団体だ。 理事長から部長クラスに至るまで、幹部には各省庁の元高級官僚の名前が並ぶ。
 つまり本来、極めて公的な性格の強い団体なのだ。 そのような団体が、収益のために都内の一等地を外国に売り渡してもいいものなのだろうか。
 KKRはなぜこの土地を売却したのか。 別の不動産関係者が語る。
 「KKRは、リーマンーショック後、保有資産の利回りが悪く、評価損となっていた。 所有不動産の売却益もその穴埋めに充てています」
 KKRのHPでは、売却予定不動産として一般競争入札予定物件が12件、随意契約可能物件が19件記載されており( 5月3日現在 )、その件数も毎週のように更 新されている。




 「公正な手続きを経た入札により落札者として決定しました。 一般競争入札においては、売買契約を結ぶ能力を有しない者や破産者で復権を得ていない者については入札に参加できませんが、中国大使館はいずれも該当しませんでしたので、売却に至った次第です」 ( KKR管財・営繕部管理課長・豊永一俊氏 )
 このようにKKRは 法を遵守した入札を行っているから、問題はない という。 外務省も、
 「外国政府が公館を設置するために日本国内の土地を購入するにつき、特段の規制はないものと承知しています」
 という。
だが、都心の広大な一等地が、やすやすと他国の手に渡ってしまう事態には、違和感を禁じえない。
 中国事情に詳しい浜田和宰参議院議員は、今回の土地取引の問題点を、このように指摘する。
 「外交関係に関するウィーン条約では、外国が土地を求めた場合、両国が便宜を図るという取り決めがあるが、中国は日本の土地を所有することができるのに対し、日本は中国の土地を一坪たりとも買うことができず、不公平といわざるをえません」
 さらに、本国在住の中国政府職員は、大使館には、公邸の拡張以外にもねらいがあると指摘する。
 「来年秋の第18回党大会で、胡錦濤から習近平に党総書記が替わる。 それに先だち、孔子学院という世界に中国文化を広めるための文化センターの建設が進められています。 習近平は『世界中に孔子学院を建設せよ』と指令を出しており、すでに世界の322ヵ所にできています」
 孔子学院は、日本でも早稲田や立命館などの大学のなかに作られているが、公館主宰の日本支部は存在しない。 そこで中国大使館が手狭になってきたこともあり、孔子学院と一体化した新大使館が建設できる広大な土地を求めていたというのだ。 昨年、新潟・名古屋では、市中心部の公有地売却に中国総領事館が手を上げたが、尖閣諸島沖での漁船衝突事件を機に市民の反対運動が起こり、交渉は暗礁にのり上げた。 今回は自治体からの売却ではなく一般入札だったため、目立だなかった。
 いずれにせよ日本国内に活動の拠点を獲得したい中国などの外国にとっては、日本の法制度は実に都合がいいもの なのかもしれない。
 松原仁衆議院議員がいう。
 「日本国内の不動産を取得するのが中国の純粋な民間機関なら別ですが、そうでない中国政府関係の建物が日本国内に建つ場合には民間と異なる判断が求められるべきです」
 現在の日中両国の勢いの差を見せつけるような一件だった。





( 2011.05.17 )
使
 

 超党派の 「日本の領土を守るために行動する議員連盟」 ( 会長・山谷えり子自民党参院議員 )は17日、国会内で緊急総会を開き、中国大使館が都心の一等地5677平方メートルを一般競争入札で落札したことについて規制を求める声が相次いだ。 外国政府の土地取得を制限する法律は事実上機能していないため、議連は法改正も視野に議論を続ける方針だ。

 総会で財務省は、国家公務員共済組合連合会( KKR )が公告した港区南麻布の私有地の入札に6社が応じ、約60億円を提示した中国政府が4月26日に落札、売買契約の期限は今月25日と説明した。

 外国政府による土地取得は政令で財務相の承認を必要としているが、中国を含めほぼすべての国は対象外とも規定している。 中国側は入札前、外務省に取得目的を 「大使公邸の建設用地」 としていたが、財務省は、用途を変更した場合でも日本側が検証する手立てがないことを認めた。

 議員からは 「何に使われるかチェックできないのはおかしい」 ( 自民党・新藤義孝衆院議員 )との意見が続出。 中国では北京の日本大使館も土地取得が認められていない点に関し 「相互主義になっていない」 ( 民主党・松原仁衆院議員 )との批判も噴出した。

 総会では、韓国が不法占拠する竹島周辺で総合海洋科学基地の建設を計画していることに関し、日韓両政府間で正式な協議機関を設けて中止を申し入れるよう松本剛明外相に働きかけることで一致した。





( 2012.03.08 )


 野田政権下で中国政府への日本の国土売却が加速されている。

 かねて中国政府は新潟市と名古屋市での領事館建設用地の取得にこだわってきたが、2010年秋の尖閣領海侵犯事件で頓挫した。

 それが後述する野田政権の方針もあり、まず新潟市中心部の民有地約4500坪が中国政府と売買契約された。 新潟県庁から徒歩数分の一等地、土地の名義は株式会社 「新潟マイホームセンター」 である。

 マイホームセンター側はこの事案に政治的背景は一切ないと強く否定し、いまは詳しいことは明らかにできないと語った。 民間企業の土地事案ながらこれを問題視せざるをえない理由は、その背景に野田政権と外務省の明確な意思があり、政府の国土売却方針は著しく国益を損ねると考えるからだ。

 そもそも一旦頓挫した中国への土地売却問題はなぜ復活したのか。 発端は北京の日本大使、丹羽宇一郎氏らの気概なき外交にある

 昨年7月、北京に新しい日本大使館が完成した。 中国政府は申請のなかった建築部分が含まれているとして、新大使館の使用を認めず、新潟と名古屋の土地の件を持ち出し、中国政府による買いとりがスムーズに進むよう、日本政府に便宜をはかるよう要求した

 この筋違いの要求については2月2日の衆議院予算委員会で玄葉光一郎外相が自民党の小野寺五典氏の質問に答える形で認めている。 日本政府は 「中国側の要請に関連国際法に従って協力する」 との口上書を1月19日に出し、その2日後に、中国側が新大使館の建築確認を出していたことも判明した。 明らかに、丹羽大使らは大使館新築とは無関係の、新潟と名古屋の土地売却に便宜をはかるという 恥ずべき妥協をした のである。




 国益を代表すべき立場でありながらのこの背信の妥協を、小野寺氏は、 「日本は政府ぐるみで中国側のハニートラップにかかったのではないか」 と評した。

 中国政府は、中国の国土は一片も売らない。 結果、日本は政府も企業も中国の土地はすべて借りるだけだ。 互恵主義なら、日本は売るのでなく貸すのが道理である。 現に米国は中国政府にはいかなる土地も売ってはいないという。

 国家の基本は国土である。 国土こそ失ってはならず、手放してはならない。 にも拘らず、日本にとって最大の脅威である中国に新潟市中心部の一等地を売ろうという背景には、国家観なき民主党政権 の責任とともに、経済交流のためとして中国の要求を安易に受け入れてきた泉田裕彦新潟県知事及び篠田昭新潟市長らの責任もある。

 対照的なのが名古屋である。 大村秀章愛知県知事、河村たかし名古屋市長は中国への売却は慎重に、との姿勢を崩さず、名古屋城下の約2400坪の候補地を守って現在に至る。 これこそ政治の役割である。


 このままでは日本のめぼしい土地は次々に中国などに奪われてしまうだろう。 小野寺氏が憤る。

 「3月6日、外務省に中国と売買契約済みとされる新潟の土地はどの土地かと質問しました。 すると、民間事案は答えられないというのです。 中国政府への売却を民間事案で済ませてよいのか。 馬鹿を言ってはいけません」

 丹羽中国大使と玄葉外相らの方針を受けて外務官僚らは国土売却に走る。 だが、外務省は国民世論の厳しさを知っているのであろう。 だから隠したがる。

 しかし、地元の大きな関心事である事案を隠しきれると思うのか。 新潟日報は3月3日付の1面トップで同件を報じたが、報道から問題の土地の特定は極めて容易である。

 現在の日本の問題は丹羽氏ら対中外交を担う人々に国家観が欠けているだけではない。 中国への国益なき国土売却の機会を窺っているのは財務官僚とて同じである。

 名古屋城下の売却予定地は国家公務員宿舎、名城住宅の跡地である。 新しい公務員宿舎、城北住宅の完成で2009年4月以降空いた名城住宅を売って、次の宿舎建設資金に当てるというのが、財務省東海財務局国有財産調整官の説明だ。 つまり公務員宿舎建設のために、中国に土地を売るというのだ。 野田政権の政治主導とは官僚とともに国土を売り続けることなのか。

 民主党政権下で中国に買われそうなもう一つのケースが沖縄県名護市辺野古に小さな湾を隔てて向かい合う90万坪のカヌチャ・リゾートだ。 普天間飛行場が辺野古に移転すれば、カヌチャの高台から同飛行場が見渡せる。

 V字滑走路が議論され始めた頃から、リゾートの評価が下がり、いまでは3期連続の赤字決算の瀬戸際に立つ。 そこに中国からも引き合いがきた。 経営者が説明した。

 「カヌチャがなくても国は生きていける。 けれど辺野古が潰れれば国が生きていけない、と私たちは考えてきました。 ですから国防政策には十分協力するつもりです。 ですが、企業としては生き残りの道を探らなくてはなりません」

 自民党時代、この土地の戦略的重要性を考慮してリゾート全体を国が買い上げる可能性が議論されたが、現在は立ち消えた。 結果、リゾートへの中国の接触は 「かなり具体的な商談」 となっていると、小野寺氏は警告する。 安保上の戦略拠点を外資から守るための法制化を最速で実現しなければならない時なのだ。

 野田政権発足から半年を迎えた3月2日夜、首相は 「しっかり1升飲んだ」 そうだ。 飲んでもよいが、いま1升飲む余裕があるのかと問うものだ。