( 2014.09.21 )

  
    





 カナダ在住時代に現地の代理店を日本へご招待し、彼らに日本観光を十二分に楽しんでもらいました。 われわれ日本人でさえ意識していない観光資源がわが国にはたくさんあります。 それをいかに世界に向けて発信するかが日本が観光大国になるためのカギですが、観光に限らず、真の国際人とは、 「自らの国をよく知り、よく語れる人」 なのです。

 まずは、日本が世界からどう見られているか、です。 戦後日本が復活の過程を終え、世界の経済大国にのし上がったとき、英エコノミスト誌のノーマン・マクレーが 「驚くべき日本の台頭論」 を、次いで米の未来学者ハーマン・カーンが 「日本超大国論」 を、社会学者のエズラ・ボーゲルが 「Japan as Number One - アメリカへの教訓」 と続いたのは、数十年前のことでした。 当時は 「欧米に追いつき追い越せ」 という情熱と努力が 「人口ボーナス」 ( 働く世代の割合が増えていくことによって経済成長が後押しされること )の恩恵も受けて実ったのでした。

 ところが冷戦終了後、急激なグローバル時代の到来に向けて、日本は新たな国家ビジョンと課題を自ら設定し、それに向かって自己革新することが不可欠であったはずなのに、戦後教育による自虐志向に染まり、自国への誇りをもてない多くの日本人は、国際化に後れをとり、自己規制から革新への挑戦を怠り 「ジリ貧経済」 「失われた時代」 へと、低迷に陥ってしまったのです。




 問題は 「これから」 だと考えます。 悲観論者は、少子高齢化の日本はますます 「人口オーナス( 負荷 )」 を受け、ジリ貧から “ドカ貧” へと向かうと言い募りますが、逆に60年前の米国が、世界経済の50%を握りパックスアメリカーナと言われて以後も続く人口ボーナスの恩恵を生かせず、今では20%以下にまで急落した現実と、そのうち米国を抜き世界一の経済大国になると持ち上げられた人口大国・中国とて、早くも成長鈍化の下り坂に突入している事態を見るにつけ、人口と経済を単純に結びつける議論は正鵠を得ていないと思います。

 一方で 「人口オーナス」 を心配された北欧諸国やドイツ、アジアではシンガポールなどが、経済好調を続けていることにこそ、注目すべきではないでしょうか。 カギは、足し算の国富ではなく、割り算の富、すなわち一人当たりの国民所得を最大化する奈辺にあるようです。





〝クールジャパン〟として世界で人気のきゃりーぱみゅぱみゅの米ニューヨーク公演。
チケットは完売し、海外での人気の高さを裏付けた
 多くの日本人が自信を失っている一方で、マンガ・アニメに代表されるポップカルチャーが世界を席巻し、併せて食文化・美しい景観と自然を愛でる伝統文化・環境保全・治安維持・道徳律の高さと奥ゆかしさ・先端科学技術とモノ造りなど、世界は今 「クールジャパン」 に夢中で、空前の日本ブームに沸いているといってもよいでしょう。

 かなり行儀の悪い近隣の数ヵ国だけが 「世界地図」 であるわけではないことに思いを致し、日本人一人一人が、日本をもっと知り、誇りを取り戻し、真の国際人として、世界200を超える国と自治領に向き合っていくべき機会を大切にしてゆくべきときだと確信します。

 英BBC放送の世論調査では、年次によって多少の順位変動はあるものの、 「世界によい影響を与えている国」 として、毎年トップクラス( 1-3位 )にランク入りしているのが日本であり、肯定が6割内外、否定は2割以下に収まっています。 8割も肯定してくれたインドネシア、フィリピンにくらべ、否定が肯定を上回ったのが中国と韓国の2ヵ国だけというのも、記憶に留めておきたいものです。

 また、世界最大のオンライン旅行会社エクスペディアによる 「ベスト・ツーリスト」 調査によると、日本人は3年連続で第1位に評価されています。 行儀のよさ、部屋の使い方、他客への迷惑、不平不満などの項目で、総合ポイントが71点、2位が英国人52点、3位ドイツ人51点ですから、日本人は世界でダントツの最良観光客としての評価を受けたのです。




 100年以上前に創刊された 「ミシュランガイド」 は、世界で毎年100万部以上売れる世界最大のレストラン格付けガイドブックですが、7年前から 「東京」 が評価されるやパリ、ニューヨークを凌ぎ、世界一の美食都市に評価され、毎年星の数を質量ともに上げて、3年目からは、三ツ星、総星数、総軒数と 「三冠王」 を独占し続けております。 星を得た店の大半が和食店であることから、 「四季を通じた食材の豊富さと高度な専門店に細分化された日本特有の多種多様な料理文化」 が高く評価されていることが分かります。

 この背景を探ると、 「人類で最初に料理をしたのが縄文人であった」 という説に突き当たります。 料理の基本が、 「煮る」 「炊く」 ことにあるとすれば、調理のベースは土器をもって出発点と定義され、その人類初の土器が、青森県大平山元遺跡から出土しており、付着した炭化物などを解析したところ、1万7千年前の調理の痕跡が証明されたのです。 つまり世界の四大文明発祥より数千年も前から、日本列島に和食料理の原点があったと考えられるわけです。



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 「もったいない」 という語の概念は、世界の、どの言語にも該当語がなく、翻訳不可能だとされ、世界中の350言語をも超える外来語を借用し、50万語強も収録するオックスフォード英語辞典にさえも、載っていなかったので、ケニアの環境担当大臣だったマータイ女史が国連演説で、この日本語を環境保全の合言葉として取り上げたのは、数年前のことでした。

 今や 「モッタイナイ」 は、レデュース、リユース、リサイクル、リペアーの4R( 4つの言葉 )を一語で表す 「自然やモノに対する敬意と愛の意思を込めた素晴らしい日本人の言葉」 として世界語となったのです。

 同じように外国語に訳せない伝統的価値観に根ざす和語に 「いただきます」 があります。 ビジネスの場で、この言葉について、動植物や自然界の全ての恵みである “食材の命を頂きます” という八百万やおろずの神に捧げる感謝の言葉からなっていることを説明しますと、他国の人達は敬意と羨望の念を表してくれます。 万物に神霊が宿るという神道の源流は、縄文人やそれ以前の旧石器時代の原始日本人による大自然との調和の精神にまで遡るようです。

 このように日本語には伝統的語彙が多く残存しており、 「日本国語大辞典」 には、英語と並ぶ50万項目以上の語彙が収録されています。 英語の場合、他言語の借用が多いので、日本語こそ、自前の語彙を大量に持つ “世界最大の言語” だといえましょう。




 日本は現存する唯一の古代国家であり、しかも有史で見ても、大和朝廷から1800年、律令制が確立し国号の 「日本」 を称してから1300年と世界最古の国家です。 2番目に古い国がゴーム王朝から1100年のデンマーク、3番目はノルマン朝から950年の英国だということは、あまり知られていませんが史実です。 世界の歴史が王朝の交代史であり、ローマ帝国をはじめ、ほとんどの国が滅亡と改変を繰り返してきた中で、2000年近く現存する王朝が続く日本は、人類史上の奇跡ともいえそうです。

 わずか230年余と歴史の浅い米国が独立記念日を、220年余の仏が革命記念日を、建国60余年の中国が国慶節を祝う建国記念日が、日本では2月11日であることをもっと意識すべきかと思われます。

 先に見たように、文字のない時代に成立したわが国であり、国家の定義が定まらない時代の古代日本建国には、 「七五三論争」 があり、3世紀畿内の邪馬台国、5世紀の大和朝廷の列島統一、それと7世紀の律令体制成立と国号 「日本」 を遣唐使が確認したときとする 「3論」 あるようですが、遅くとも聖徳太子の604年理想の国家像を示した十七条憲法制定と607年遣隋使の国書で対等外交を宣言したころには、日本の完全なる独立が完成していたと考えられます。 この7世紀初めの政治外交史に目をやり、日本人たる誇りを持ち、国際化に臨みたいものです。